山下一仁
2012年12月11日
新聞各紙が総選挙での自民党圧勝を予想している。どのような人が当選するのだろうか。朝日新聞と東大谷口研究室が共同して候補者にアンケート調査を行った結果をみると、TPPについて、民主党は賛成派5割台半ば、反対派2割強、自民党は反対派が6割となっている。民主党は、反対派の小沢グループが離党したりして、純化しているものの、北海道などのように農村地域では、候補者があからさまにTPP反対を唱えている。注目は、政権党となる可能性の高い自民党である。前回選挙で落選した人たちが、大量に復活当選するだろう。元職の候補者115人のうち73人が自民党候補者である。農村部の候補者には、農林族議員と目される人たちが多い。自民党にTPP反対派が多いというアンケート調査はこれを反映している。
この人たちは、選挙で農協からTPPについての踏み絵を踏まされている。農協は当選後約束の履行を求めてくるだろう。農業票は少なくなっている。しかし、二人の候補者が競っている小選挙区制では、1%の票でも相手方に行くと、2%の票差になってしまう。これを挽回するのは容易ではない。ある衆議院議員は私に、「選挙になると、対立候補に本当に‘殺意’を持ちます。」と語った。これは、嘘いつわりのない言葉だろう。農業票にはもはや候補者を当選させる力はない。しかし、小選挙区制の下では、落選させる力は十分持っている。1%でも、逃がしてはならない組織票なのだ。
これまで、TPP反対派は、TPPは今年中に妥結するので、日本が参加してもルールに影響を与えるような時間はなくなっていると主張してきた。これはオバマ大統領の2012年中の合意を目指すという発言を根拠とするものだった。しかし、私は、通商交渉は国内の特定の業界に痛みを伴うものであり、大統領選挙のある2012年の合意などはない、これはワシントンの通商専門家の共通認識だと反論してきた。
実際、今年中の妥結は困難となり、TPP参加国は来年2013年10月の合意を目指すこととなった。この可能性はどうだろうか?交渉は2年以上も行っている。既に、各国の提案は出揃っている。アメリカの政権交代はなくなった。交渉プレーヤーに大きな変更はない。現在、対立が鮮明になっているのは、争点が絞られてきているからだ。しかも、
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