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核燃料サイクルと「アメリカの意向」

吉松崇 経済金融アナリスト

 与野党11党首が集った11月30日の日本記者クラブ主催の党首討論会で、日本維新の会代表・石原慎太郎氏は、その選挙公約のひとつ、「2030年代までに既存の原発をフェードアウトさせる」に関する記者からの「核オプションを失っても良いのか?」という質問に、「それは困ります。公約を直させます」と答えた。石原氏は、「核オプション」に、強いこだわりを見せたのである。ここまで直截に語る人は珍しいにしても、多くの政治家が、原発と安全保障を、暗黙のうちに(或いは曖昧な言葉で)結び付けて語ろうとする。

 8月28日、野田首相は、当選1回の民主党議員15人との懇談会で、「安全保障問題があるので、原発ゼロと簡単にいうわけにはいかない」と語った、と報道されている。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201208/2012082801040

 また、10月15日の読売新聞は、前原国家戦略相が、核燃料サイクルについて「このまま継続する。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の役割は極めて大きい」と述べ、事業継続の必要性を強調した、と報道している。この記事の中で同紙は、「核燃料サイクル見直しを懸念する青森県やアメリカへの配慮を強くにじませた」と解説している。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121015-OYT1T00897.htm

 非核武装国で、使用済み核燃料の再処理を行っているのは日本だけである。使用済み核燃料から抽出したプルトニウムを再び、高速増殖炉で、或いはプルサーマルとして、燃料として使用する、というロジックで再処理を行い、これにより、日本は大量のプルトニウムを保持している。これが、いわゆる「核オプション」である。

 だが、「核燃料サイクル見直しを懸念する青森県やアメリカへの配慮」という読売新聞の解説は何を意味しているのだろうか?

 青森県に配慮する、というのは理解できる。核燃料サイクルを見直す、つまり、使用済み核燃料の再処理を停止するのであれば、青森県は使用済み核燃料の搬入を認めない。そうすると、使用済み核燃料の行き場がなくなってしまう。しかし、アメリカに配慮する、とはどういう意味であろうか?再処理を停止するとアメリカが困るのだろうか?

アメリカは再処理に反対している?

 11月28日のニューヨーク・タイムスは、”Japan’s Nuclear Mistake”と題する、フランク・フォンヒッペル・プリンストン大学教授の寄稿を掲載している。フォンヒッペル氏は、もともとは理論物理学者だが、クリントン政権時代にホワイト・ハウスの核安全保障問題担当スタッフを務めており、現在、国際関係・公共政策を担当する同大学ウッドロー・ウィルソン・スクールの教授である。現政権に直接関与している訳ではないが、アメリカの安全保障政策に精通していると思われる人物である。

(”Japan’s Nuclear Mistake” by Frank N Von Hippel and Masafumi Takubo, New York Times, November 28, 2012)

http://www.nytimes.com/2012/11/29/opinion/japans-nuclear-mistake.html?smid=tw-share&_r=0

 その要旨を整理すると、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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