松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者
1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
いつまでたっても「完成」しない六ケ所村の再処理工場は、なぜ倒産しないのか? 全国の原子力発電所などには1万7千トンの使用済み核燃料が保管されている。それを再利用するという青森県六カ所村の「再処理工場」は、いつまでたっても「完成」しない。それなのに、運営する日本原燃には毎年3000億円近い「売上高」があり、「利益」をあげている。調べていくと、ある「天下り法人」に行き着いた。
日本原燃の2011年度の売上高は3017億円で、113億円の経常利益をあげた。うち、再処理事業は2741億円と、98%を占めている。ところが、現実には、11年度は、新たな使用済み核燃料の処理を受注していない。なぜ、こんなに多額の売上高があるのか。
六ケ所工場は、05年度末ぎりぎりの06年3月31日に、実際の使用済み核燃料を使った「アクティブ試験」を始めた。05年度の有価証券報告書を見ると、この年の再処理事業の売上高は530億円だった。わずか1日の操業で、売上高は前年度の倍近くに増え、経常利益も14億円と、長く続いた経常赤字を脱却した。それに付随して1596億円の特別利益も計上した。
試験が本格化した06年度の売上高は3000億円を超え、経常利益も279億円と好調だった。ところが、07年11月に高レベル放射性廃液の「ガラス固化」を始めたところでつまずきが出た。
使用済み核燃料は、再処理工場でばらばらにされ、硝酸に溶かして、再利用するプルトニウムと燃えずに残った劣化ウランが取り出される。残った廃液を高温のガラスと一緒に煮詰め、水分を蒸発させながら高い放射能を持つ廃棄物をガラスとともに円柱形のステンレス容器(キャニスタ)の中に流し込んで固める。重さ400~500キロになる。これがガラス固化の工程だ。
高レベル廃液物は、ガラスで固められた後でも、