永井隆
2012年12月13日
「輸出立国・日本は今後なくなっていき、代わりに日本人ワーカーが海外工場に赴き現地の社員と一緒に働く時代が来た。現実に、今年3月から生産を始めたタイの新工場には、日本の工場からワーカーを170人送り込んでいる。170人にはベテランの指導者だけではなく、若い作業者も含まれる」
そう語るのは鈴木修スズキ会長兼社長だ。
日本の自動車メーカーでは、最後発でタイに工場進出を果たしたスズキ。1983年にインドで現地生産を開始した頃は、「インド人を浜松に研修に来させた」(鈴木会長)のとは違い、日本人ワーカーが出ていく形を取った。これは初めての試みだ。
背景には超円高がある。総選挙後の金融緩和への期待感から、円安株高に振れてはいるものの、1ドルが80円前後の為替水準が定着している。リーマンショック前の110円台といった「円安に戻るのはあり得ない」(鈴木会長)と判断した。このため、消費地で生産する「自動車の地産地消を進める」(鈴木会長)考えだが、日本人ワーカー投入は新工場の品質レベルを最初から日本並みするのが目的だ。タイ工場では、小型車「スイフト」を生産。低燃費と軽快な走り、さらには日本製と同等の品質が受け、当初計画の3倍に当たる3万台を受注している。
生産台数は年内2万1000台の見込む。来年は5万台、2016年には10万台を生産目標としている。
「インドに続く海外2番目の柱として、(76年に生産開始した既存の)インドネシア工場とタイ工場がある。両国間は関税がかからないので相互に車種をやり取りしている。他のアジアやオーストラリアにもタイ製スイフトを輸出する。そのためにも、最初から高品質でなければならない。言葉? それは大丈夫、ワーカー同士は心で通じ合えるから」(鈴木会長)。
世界の自動車市場は急拡大している。2012年の販売見込みは約7800万台だが、早ければ17年にも1億台を超えると勢いだ。牽引するのは新興国。中国やスズキがトップのインド、ロシアやブラジル、そして日本車が圧倒的に強いASEANなどである。5年間で拡大する2100万台強の8割は新興国市場が占めると見られるのだ。少子高齢化が進む日本をはじめ、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください