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安倍政権の経済政策~金融緩和政策の成果次第で政権の命運が決まる

吉松崇 経済金融アナリスト

 今回の総選挙の結果が示しているのは、自民党の勝利ではなく、民主党の敗北である。そして、こうなることは投票前から判っていた、というべきだろう。そもそも、(比例代表を除いて)小選挙区制という選挙制度では、1つの選挙区で1人しか当選しないのだから、2大政党が争うのでなければ機能しない。ところが、今回は、与党の民主党が分裂して、その分裂した党がお互いに「刺客」を送り込んで選挙を戦った。これでは、どの党も自民党に勝ち目がない。

 もうひとつ、民主党敗北の重大な理由がある。それは、今年の夏場以降の急激な景気の悪化である。今年第3四半期の実質GDP成長率は、年率2.7%のマイナスである。このような事態に陥ることは、鉱工業生産指数が5月から急激に悪化したので、初夏には判っていたことだ。ところが、野田政権は、なんら有効な手だてを打てなかった。景気が減速している中での小選挙区制の選挙で、政権与党が勝利を収めるのは、そもそも難しい。

 NHKが、12月7日~10日に行った世論調査によれば、投票に当たって最も重視するポイントは、1位「経済対策」33%、2位「社会保障制度の見直し」22%、3位「原発の在り方を含むエネルギー政策」11%となっている。「社会保障の見直し」も、「原発の在り方を含むエネルギー政策」も、極めて重要な政策テーマだが、多くの人にとっては、それどころではなかった。今日の生活が最大の関心事だった。小選挙区では、仕事を回してくれそうな政党に多くの人が投票した、ということだろう。小選挙区での自民党候補者の得票率は約43%であり、これは前回2009年の得票率38.7%は上回っているが、この時の民主党候補者の得票率47.4%には及んでいない。自民党に風が吹いていた訳ではない。

金融政策の争点化でわかったこと

 この選挙における政策論争で、これまでになかった事態が出現した。それは、自民党の安倍総裁が、金融政策を選挙の争点としたことである。恐らく、金融政策が選挙での争点になったことは、これまでに無かっただろう。「金融政策は専門家である日銀に任せておけばよい」というのが、これまで長年に亘って、多くの政治家が抱いてきた通念であった。

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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