2012年12月21日
私はWEBRONZA・5月1日付けで、「日銀は、やはり物価目標2%を掲げよ」と書いたことがあり、その主張をここで繰り返すとともに、一見私の主張と似ているようだが根本が違うマネタリストや自民党の政策に対して批判的見解を述べておきたい。
日銀は、ことし2月の決定会合で「当面の物価安定の目途」として消費者物価上昇率「前年比1%」を掲げて市場関係者に歓迎されたが、その後はむしろ「本気度」が疑われてきた。金融緩和と物価目標の設定は、日銀がいいやいやながら、あるいは本来の理念に反して渋々と、打ち出した策であったし、そのことを日銀が素直に認めてしまっていることが根本にある。
もともと「消費者物価指数」は実態よりも最大1%程度高く出るという統計上のくせ(上方バイアス)があるといわれてきた。だから、消費者物価が前年比1%程度の上昇が見込めるようになったとしても、GDPデフレーターはまだマイナスで、デフレが続いているかもしれない。その状態で、金融緩和をやめてしまってはいけないのである。
そう考えると、日銀は物価目標を「2%」にして掲げ直せばよかった。せめて、「1%台後半の水準が定着したことを見極めるまで、金融緩和を続ける」ことを明らかにし、「実質2%目標」路線に手直しし、断固としてその路線を貫くと宣言しておけばよかったのである。
白川総裁は、「毎年1回点検して、いまのバイアスがどうなのか、あるいはのり代がどうなのかとか、あるいは国民の物価観がどういうふうに変化しているか、これを丹念に点検してこの問題を考えていきたい」といっていたのだから、その見直しをこれまでにおこなえばよかったのである。
日銀内には「2%」を目標にすると、国債相場の急落=流通利回りの高騰といった事態を呼び込みかねない、といった懸念の声がある。その心配もわかるが、物価の急騰に機敏かつ果断に対処する前提で、物価目標を実質的には2%に引き上げるべきであると私はいまも考える。
知力に恵まれた白川総裁が、
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