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消費税の食品減免とTPP参加

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 消費税が2014年度に8%に2015年度に10%に引き上げられることになっているが、所得の低い人のための食品など必需品への非課税または減免課税、所得還付などの対策が議論されている。

 民主党は低所得者への所得還付に、公明党は減免課税に熱心だった。低所得者への所得還付は所得の捕捉が十分でなく、実務的に難しいということもあるが、民主党政権から自公政権になったことで、食品への非課税または減免ということになるだろう。

 ただし、食品への減免という方式には様々な批判がある。所得の高い人も食品を購入するのだから、必ずしも低所得者対策にはならないと言われている。

食品に課税しないで高い食品価格を容認する矛盾

 私が不思議に思うのは、多くの人々が、低所得者を保護するために食品に課税してはならないと議論するとともに、現在、日本の食品価格が高いことを問題にしていないことだ。なぜ日本の食品価格が高いかと言えば、農業保護のために安い農産物の輸入を制限しているからだ。

 一方で農業保護のために高い食品価格を容認し、他方で、所得の低い人のために食品に課税してはいけないというのは矛盾している。

 この矛盾を解決する方法はある。一方で農産物輸入を自由化し、価格が下がった分だけ農家に戸別所得補償として支払うことだ。輸入自由化で農家は損をするが、消費者は得をする。消費者の得の分を農家に配れば何も変わらず、農産物の自由化ができる。TPPに参加して工業製品の自由化の果実を得ることができる。

 こう言えば、国民経済としては得するだけだが、財政としては新たな税源を見つけなければならず、簡単ではないという反論があるだろう。しかし、

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