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 建設国債を増発し、日銀が市場でそれをめいっぱい買い支える。かけ声は「脱デフレ」。だが内実は、与党の参院選対策に好都合な公共事業のばらまきとなりかねない。それでもこれは幸か不幸か、当面は経済界や官僚、被災地などからある程度歓迎されるだろう。

 

 2013年夏までは市場関係者の期待をよりどころとして、さしたる反対もなく進められるのではないだろうか。問題は日本経済に及ぼすその影響と、結果としての脱デフレの成否だ。「目先は明るいが、改革・再生への道は遠く、脱デフレは困難」というのが私の率直な見方である。

 

 2013年の日本経済については、外的要因を考えてみるだけでも、米国経済のゆくえや欧州危機の動向、中国経済の先行きなど、さまざまな変数があるため、なかなか読みにくい。ただし、傾向的には米国がオバマ政権の政策効果や、シェールガス革命、住宅市場の回復などを足がかりに成長軌道に復帰すると期待されている。欧州はギリシャやスペインの危機をなんとか封じ込めていくと見られ、中国も余力のある財政の出動や内需拡大策によって失速を最小限に食い止めていくということをメイン・シナリオと考えて差し支えないと思う。

 

 国内的には、復興需要の一段落で失速が明らかになってきたが、自民・公明の政権復帰で公共事業依存型の財政出動が大規模に繰り返されることが想定されるため、内需はこれを支えに一定の盛り上がりを示すだろう。同時に、日銀の量的緩和の追加や、インフレ目標の本格導入によって円高に歯止めがかかり、輸出関連企業の採算が回復してくることをテコとして、企業収益が改善してゆくと期待される。

 

 大型補正の予算編成や公共事業の前倒し執行、さらに規制緩和策の発表などによって、無理やりにでも公的需要および民間の意欲を引き出そうとする政策が連発され、参院選までにあの手この手で景気刺激を図ろうとする政権の姿がはっきりしてゆくであろう。

 

 こうした政策は、国道交通省や経産省の官僚および業界の支持を得るばかりではなく、財務官僚の支持も得たうえで推進されようとしている点に特徴がある。

 

 総選挙での大勝という政治力を背景に、与党が財務官僚に対して優位に立ち、財政再建よりもデフレ脱却という名の公共事業拡大を優先することが可能になったこともその一因だ。しかし、 ・・・ログインして読む
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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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