2012年12月31日
総選挙の結果は自民党の圧勝、というよりも民主党の自滅であった。
比例区の自民党の得票率は約27%、獲得議席数は57議席で、政権を失った前回2009年の55議席と殆ど変わらない。いわば、国民の大多数が自民党の政策に全面的に賛意を表したわけではなく、経済政策についても識者のなかで大きく意見が分かれているようである。それゆえ本稿では、自民党の個別の経済政策について、テーマごとその是非について検証してみたい。
■2%の物価目標
物価目標(インフレターゲット)は、本来インフレを抑制するために導入するものであって、デフレ脱却のために物価目標を設定し、その実現のために大胆に金融を緩和するというのが、経済政策として適切なのか、たぶん識者のなかでも意見が分かれるのではないか。
因みに、米国の2%目標というのは、現状CPIが2%近辺にあって、放置しておけば3~4%へと上昇するかもしれないものを2%で抑制するために導入しているのであって、これは説得力がある。
日本のCPIは現状ほぼ0%、2014年の予測が0.8%、実質経済成長率見通しも2%に満たない。このような状況下で、市場に大量に資金を供給し2%の物価目標だけを達成させようというのはいささかリスクが大きいように思う。いわゆるスタグフレーションを招かないために、同時に実質経済成長を促すような効果的な経済成長戦略を実施すべきであり、その結果需給ギャップが解消され自然に物価が上昇する。これが望ましい姿ではないか。
■円高是正と金融緩和
円高是正を目的に大胆に金融を緩和することが、本来の為替政策に照らし賢明な選択なのか。市場に資金をふんだんに供給することにより金利を引き下げる。そして金利差で自国の通貨価値下落を促す。これは利を求めて世界を駆け巡るグローバルな余剰資金を操作するものであって、金利が変動すればその流れは直ちに逆行する。これを恣意的に操作し続ければ、通貨切り下げ競争から保護貿易主義をも引き起こしかねない。経済のファンダメンタルズとは無関係に、金利だけで通貨を調整する。これはけっして健全な姿とはいえない。
円高の環境下で、海外の事業や資産への投資が拡大する。日本からの輸出が、海外での生産で代替され貿易収支が調整される。一方で、海外活動での利益が国内に還元され所得収支が改善する。結果として、経常収支が経済力に応じた形で適切に調整され、そのうえで実力相応の為替レートが定められる。これがあるべきプロセスではないか。
■公共事業の是非
国土強靭化対策で10年間200兆円の公共事業を実施するという。政府に今以上のペースで財政赤字を拡大する余裕はもうない。自民党は民間資金も活用するゆえ財政負担はそれほど大きくならないと説明している。しかし民間企業が、災害対策のような収益性の低い事業に積極的に関わることはない。
高速道路の40兆円にも及ぶ長期借入金の返済期間を10~20年延長して3~5兆円を捻出し、補修費用に充てるという。高速道路株式会社は企業ゆえ民間の資金だというのだろうか。3~5兆円を捻出するメカニズムと国家財政への負担の関係についてもう少し詳しい説明が欲しい。
建設国債は資産が残るという。しかしながら建設国債も負債である。建設された資産が経済活動に寄与して付加価値を生み、この債務を償還するための税収が生まれなければ、結果として財政赤字が拡大するだけである。これは、過去の公共事業ですでに体験済みである。
防災・減災対応や老朽化対策の補修などは実施せざるを得ない。そのためには、
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