2013年01月01日
2013年は本格的な自民党経済政策の実施の年となる。安倍総理が主導する経済政策は、大幅な金融政策の緩和、公共事業への思い切った財政発動、成長戦略の三本の矢からなると説明される。
この「アベノミクス」と称される経済政策は、うまくいくのだろうか?
まず、最も話題を呼んでいるのは、金融政策である。経済の現状について、デフレだとする問題認識がある。単なる物価の低下であれば、問題はないどころか、好ましいものである。賃金が一定で、モノやサービスの価格が低下すれば、実質的な所得は向上するからである。TPPに参加して食料品の価格が低下するのは、良いことである。
しかし、多くのエコノミストが問題とするのは、物価が毎年継続的に下がっていくと、耐久消費財などは今年買うよりも来年買ったほうが安くなるので、買い控えが生じ、需要の減少により賃金が低下したり、失業が増加したりするということだろう。このため、マネー・サプライを増やして、適度のインフレを起こそうというのである。物価が来年上がると思うと、今年のうちに買っておこうという気持ちになるので、需要が増え、GDPは増加する。
しかし、インフレの下で賃金が上がらなければ、実質所得は低下し、需要も抑制されてしまう。そもそもデフレは、どうして起きているのだろうか?次のような説明が可能だろう。
従来日本が得意としてきた電気製品などで、海外の企業と競争できなくなった。このため、輸出企業は非正規雇用を増やしたり、賃金をカットしたりして、利益を確保しようとした。輸出産業でも貿易と関係ない国内の流通業やサービス業でも、企業は、同じような労働には、同じような対価、つまり賃金しか支払わない。そうであれば、輸出企業における賃金低下は、他の産業にも及んでしまい、経済全体の賃金は低下する。これにより需要が減少するので、物価は下がるとともに、賃金もさらに低下する(もちろん、賃金の低下幅が物価の低下よりも小さければ、実質賃金は上昇し、問題は起きない)。
これがデフレのメカニズムであるとするならば、貨幣供給を増やして円安に誘導すれば、輸出が増加して、輸出企業が潤い、輸出企業での賃金増加や雇用の拡大が、経済全体に波及し、不況は克服できるかもしれない。しかし、円安は石油、鉱物資源や食料などの輸入財の価格上昇を招き、賃金が上昇しなければ、かえって経済を悪化させるおそれもある。
なによりも、
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