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次期日銀総裁には「政策レジームの転換」を体現できる人を!

吉松崇 経済金融アナリスト

 白川日銀総裁の任期が今年4月に迫っている。年が明けて、新たな日銀総裁に誰を任命するかが、安倍新政権の最初の大仕事のひとつである。

 昨年末の総選挙期間中に安倍氏とのファックスのやりとりで有名になった経済政策ブレイン、浜田宏一イェ-ル大学名誉教授の新著、「アメリカは日本経済の復活を知っている」(講談社)の中には、次期日銀総裁の候補として、元日銀副総裁の岩田一政氏や伊藤隆敏東大教授ら、五指に余る有力候補の名前が出て来て、浜田名誉教授のめがねに叶う適任者がこんなにいるのか、と驚くと同時に、頼もしくなる。ここでは、個別の名前はさておき、日銀総裁人事に関して、私の考える重要なポイントについて述べたい。

学者か官僚か? 重要なのは出身ではない

 日銀総裁人事といえば、5年前のゴタゴタを思い出す。あのとき、福田首相の推す武藤敏郎日銀副総裁の昇格案に、民主党が、「武藤氏が財務省出身である」という理由で反対して、人事案が暗礁に乗り上げ、結局、日銀出身の白川氏が総裁に就任することになったのだが、私には、この民主党の反対理由が、全く理解出来なかった。

 重要なのは、どこの出身か?ではなく、日銀総裁として何をやるのか?である。マクロ経済政策、とりわけ金融政策に関して、優れた識見を有する人物でなければならないのは当然であるが、そういう人物は学者にも、官僚出身者にもいるだろう。例えば、上述の浜田氏の著書で名前を挙げられた人の中でも、岩田氏は経済企画庁(現内閣府)の出身であるし、伊藤氏は国際的に名の知られたマクロ経済学者である。

 しかし、今回も、報道によれば、安倍政権の閣僚のなかに「日銀総裁は大きな組織のトップなので学者には難しい」という人もいるようだ。おそらく、官僚、それも財務省の応援団としての発言だと思われるが、日銀総裁の適格性を考えるのに、日銀という組織のマネジメントは二次的な要素であり、この問題は、総裁と(日銀事務方のトップである)副総裁の役割分担を整理すればいいだけの話だ。私は、財務省の出身者でも一向に構わないと思うが、その場合も、重要なのは、その候補者の金融政策についての識見であろう。

「政策レジームの転換」を市場参加者が納得する人事

 更に、次期日銀総裁は、「この人なら、これまでの日銀総裁とは全く異なる成果、つまり脱デフレを成し遂げてくれる」と、人々(市場参加者)が納得するような人でなければならない。そうでないと、いくら金融緩和を訴えても(行っても)、成果が現れるのに、時間がかかるか、或いは最悪の場合、成果が現れないことになる。

 これは、トム・サージェント・ニューヨーク大学教授(2011年のノーベル経済学賞受賞者)が、「政策レジームの転換」と呼ぶ現象である。サージェント教授は、ドイツが第一次世界大戦後のハイパー・インフレーションから脱却した、いわゆる「レンテンマルクの奇跡」を研究して、実際にはマネーが収縮する前に、人々のインフレ予想が変化して、インフレが収束した、という。つまり、中央銀行の実際の行動以上に、人々の「中央銀行の行動に対する予想」が重要である、ということである。(政策レジームについては、拙稿「安倍バッシングは見当違いだ!-総選挙はデフレ脱却のまたとないチャンスだ-」(2012年11月28日)もご参照願いたい。)

 現在の日本が直面しているのは、 ・・・続きを読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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