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戦略なき農産物輸出拡大は不可能

青山浩子 農業ジャーナリスト

 アベノミクスがもたらしている円安傾向は、農林水産物の輸出拡大の可能性を引き出している。しかし戦略なき農産物輸出ではチャンスをものにできない。事実、日本の農産物輸出はここ数年伸び悩み、国内の農業産出額が日本の3分の1にとどまる韓国に金額面では追い抜かれている。

 “農林水産物の輸出額を1兆円にしよう”と目標を打ち立てたのは小泉純一郎首相だ。農水省内に輸出促進のための部署を設置し、これまで内向きだった農産物の販路を外にも求めた。号令が功を奏したのか、輸出額は徐々に伸びていった。

 だが、この頃から輸出を手がけてきた農業者たちに話を聞くと、軒並み「いまは非常に厳しい」という答えが返ってくる。数字を拾ってみると、農林水産物全体では07年、農産物は08年をピークに輸出額が減っている。円高、そして福島第一原発事故にともなう風評被害が輸出にブレーキをかけた点も影響しているが、どうやらそれだけが原因ではなさそうだ。

 ある大手商社の幹部は「香港では日本の農産物が産地間競争をしていて、値崩れを起こしている」という。日本産農産物を輸出する場合、農業者自ら営業をおこない、販路開拓をする場合もあれば、各都道府県が主導して展示会や商談会に参加して、自慢の農産物を売り込む場合もある。

 ただ、各県、各産地がバラバラに売り込みをしており、先方国のバイヤーに選択権を渡してしまっているのだ。「この前、○○県の人が提示した金額より安ければ買うけど」と完全に足元を見られている。香港に米を売り込んだ山形県の稲作農家は「1kg200円なら買ってあげると言われて驚いた。輸送コストや燻蒸費用などを入れればとても合わない。日本国内で売ったほうがずっといい」と嘆いていた。別の農家によると同様の状況が香港のみならず、シンガポールでも起こっているという。

 品種上の問題もある。りんごの品種として代表的なふじ。日本生まれだが、

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