2013年03月01日
今から10年ほど前、新聞社を退職したばかりの筆者は、人口減少問題に興味を持ち、東京大学経済学部のグローバル・ビジネス・リサーチ・センター(GBRC)に論文を書いたことがあった。(赤門マネジメント・レビュー2003年4月号「2006年問題の衝撃」人口減少が招く三つの争奪戦)
その論旨は、「2006年をピークに日本の人口は減少に転じ、これが日本社会や経済の大きな足かせになる」というものだった。
実際には、2006年の後も人口の微増が続いたが、2008年以降現在まで、いずれの月においても、人口は前年に比べて減少し、減少率も徐々に大きくなっている。つまり、2008年が「人口減少元年」となった。
レポートより2年遅れで、日本の人口減少が本格的に始まったわけだが、実は、予想した通りにならなかったことも、あった。
それは、日本以外の先進国の人口推移である。筆者はレポートで次のように記した。
――日本に続いて、欧州連合(EU)ベースでも2008年に人口のピークを迎える。ドイツでも、2050年の人口が現在より2300万人も少ない5900万人との予測が出ている。イタリアもフランスも同様だ――(引用終わり)
ところが最近(2012年12月)、EUでの人口推移を調べて、驚いた。
フランスではその後も人口が増えている。2005年に6096万人だったのが、2012年には6241万人と、150万人も増えた。
イタリアでは、2005年の5846万人から、2012年には6089万人に達した。イギリスも2005年の6024万人から6307万人に増加している。ドイツだけが微減の状況だ。2005年の8246万人が、2012年には8177万人となった。
EU全体の人口増減率は、この数年0.1-0.15%で推移していたが、2010年には0.2%と跳ね上がった。(Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the United Nations Secretariat, World Population Prospects: The 2010 Revision)
日本の人口減少問題については楽観論者と悲観論者がいるが、特に楽観論者の根拠の一つは「人口減少は、日本だけの問題ではない」というものがある。
計画的な移民移入を続けている米国は別として、「人口減少は先進国共通の現象であり、抜本的な解決策はない」と多くの日本人が信じ切った。
ところが、
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