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WiFiフリーで世界に劣る東京、都市力の差はどこから来るのか

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 米国からiPadを手に東京に来た知人が、「WiFiフリー(無料の無線LAN)で端末を使える場所が少なすぎる」と嘆いている。WiFiを使えるアクセスポイントはそこそこあるのだが、ほとんどは通信キャリアとの契約や事前登録が必要。日本人には当たり前でも、その場ですぐ使える無料のWiFiに慣れている外国人には、すこぶる評判が悪い。

 筆者は最近訪れたタイで、政府が公共施設、ホテル、レストランなど街中に無料のWiFiを普及させ、ネット利用者の便宜を図っていることを知った。道路や水道と同じように「社会に不可欠なインフラ」という位置づけで、政府が成長戦略として推進している。

 外国と東京に、なぜこのような違いが生じるのか、以下で考えてみたい。

タイのいたる所にある「WiFiフリー」のマーク(トイレ利用と同じ感覚!)=チェンマイ市内で、筆者撮影

 WiFiとは、無線LANでつながるインターネット回線のことで、通信速度が携帯電話回線より格段に速い。日本では主に通信キャリアや大手コンビニ、スーパーなどが提供するアクセスポイントに限られ、事前の有料契約や会員登録が必要になる。いつでも自由に使いたければ、結局、WiFiルーターを購入して持ち歩くことになる。

 しかし、海外では無料のWiFiスポットが、街中に普及しているのが常識になっている。公的、私的なスポットが入り混じり、端末さえあればネット利用に困ることはない。だから筆者の知人もiPadがあれば大丈夫と思いこんで来日したのである。

 東京都は2020年の五輪招致を目指している。世界中から観客を集めるのだから、さぞWiFiに理解があるかと思ったら、そうではないようだ。

 新宿にある都庁には今、無料のWiFiスポットはおろか、通信キャリアが提供するアクセスポイントもない。都は「3月末ごろには使えるようにしたい。ただ、無料にするのは(3・11のような)大災害の時だけに限る」という。

 おそらく通信キャリアのアクセスポイントを設けるのだろう。最初から無料にして都庁や区役所で広く使えるようにすれば、都民も地理不案内な外国人も便利になる。民間でも見習うところが増えて東京の都市力アップにつながると思うのだが、通信キャリアに遠慮したのか、ケチ臭い話で終わりそうだ。

 不便なのは都庁に限らない。「すべての人が観光しやすい環境を整備する」という国土交通省も、インターネット産業の旗を振る経済産業省も、庁舎内にはWiFiスポットがない。両省とも「今後も設置する計画はない」と言う。グーグルマップで都内のWiFiスポットを調べると、霞が関の官庁街はすっぽり空白域だ。

 役所側に、無料のWiFiが「ネット社会に必須のインフラ」という意識や、「住民サービスになる」という認識が薄いのだろう。

 しかし、自治体の中には、東京都や中央官庁と違って、無料のWiFiが観光やビジネスの決め手になることを理解し、すでに実行しているところがある。

 福岡市は無料の「福岡シティWiFi」を1年前に立ちあげ、

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