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高齢化する日銀総裁、副総裁の実力

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 安倍政権は、アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁(元財務官)を日本銀行の総裁に、副総裁に岩田規久男・学習院大教授と中曽宏・日銀理事(国際関係統括)を起用する方針で、衆参両院が同意すれば3月20日に新体制がスタートする。

 限られた人材プールの中で、悪くない新体制だと思う。別稿「日銀総裁に外国人という選択」で書いたように、ADB総裁は創設以来、大蔵省や財務省出身者を中心として日本人が独占してきた。投票権は一カ国1票ではなく出資比率で決まる。日米が筆頭の出資比率で合計30%程度、先進国だけで過半数となり、後任人事が日銀人事の障害になりにくいという判断なのだろう。

 人事の基本は世代交代である。出身別に新旧を比較すると、白川総裁(63歳、1949年生まれ)に対して、黒田氏(68歳、1944年生まれ)。学識者の西村副総裁(59歳、1953年生まれ)、岩田氏(70歳、1942年生まれ)、日銀出身の山口副総裁(61歳、1951年生まれ)、中曽氏(59歳、1953年生まれ)。中曽氏が若返っているものの、就任時年齢では新体制の3人が現体制を上回る。新体制は高齢の布陣となる。黒田氏に近いのは、福井・前総裁の就任時の年齢(68歳)である。

 海外では、米連邦準備制度(FRB)のバーナンキ総裁は1953年生まれ、欧州中央銀行のドラギ総裁は1947年生まれである。若いところでは、スイス国立銀行のジョルダン総裁が1963年生まれ、イングランド銀行総裁が決まっているカーニー・カナダ銀行総裁が1964年生まれである。もちろん「マエストロ」と呼ばれたFRBのグリーンスパン前総裁は61歳から80歳まで総裁を務めた例がある。

 自民党に近い限られた候補者から政治任用するわけだから、やむを得ないところだろう。しかし金融市場はグローバル化している。金融危機などでは時差を超えた緊急協議や判断を求められる激務である。「年齢は関係ないぞ」とのお叱りも予想されるが、年齢はひとつの重要なファクターである。

黒田氏の強みは、政権や市場とのコミュニケーション力

 黒田氏が財務官として国際金融の中核にいたのは1999年から2003年である。世界ではITバブルの崩壊、日本では不良債権問題が深刻化していた時期だ。その後も、ADB総裁として、アジア諸国と交流し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行というワシントンとの人脈も太い。

 金融緩和論者とされるが、

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