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アベノミクスの真実 リフレ政策の終わりの始まり

森永卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

 安倍政権が新しい日銀執行部の顔ぶれを決めた。総裁に黒田東彦アジア開発銀行総裁、副総裁に岩田規久男学習院大教授と、同じく副総裁に中曽宏日銀理事の3人だ。民主党も多くの議員がこの人事に理解を示しているため、おそらくこの陣容で新執行部がスタートする可能性が高いだろう。

 一般的には、早くからインフレ目標政策の採用を提唱していた黒田氏と岩田氏の2人が執行部に入ったのだから、アベノミクスの最重要課題であるデフレ脱却のための大胆な金融緩和が実施されるとみる観測をする人が多い。しかし、私はそうは思わない。

 安倍総理が本当に物価上昇率目標2%を目指すのであれば、岩田規久男教授を総裁に据え、副総裁もリフレ派の学者から選出して、執行部から財務省出身者と日銀出身者を排除すべきだった。もちろん、日銀出身者が総裁になることと比べたら、黒田氏の総裁就任はずっとましだが、黒田氏は物価上昇率が2%に達するほど大胆な金融緩和を行わないだろう。その理由は、黒田氏が財務省出身だからだ。

 財務省出身者が大胆な金融緩和に踏み切れない理由は二つある。一つは財政負担の拡大だ。現在の国債発行額は、新規発行国債と借換債を合計すると160兆円に達する。物価上昇率が2%に達し、国債金利も2%上昇すると、国の金利負担は3兆2000億円も増えてしまうのだ。

 もう一つの理由は、金融機関への悪影響だ。国債金利が上昇すると、低金利時代に発行された国債の価格が下落する。その時、大量の国債を保有している銀行部門に大きな損失が発生する。日銀が昨年10月に発表した「金融システムレポート」によると、国内金利が1%上昇したときに大手銀行は3・7兆円、地方銀行は3兆円、信用金庫は1・6兆円の評価損を抱えるという。銀行全体の評価損は8・3兆円だ。もし2%金利が上がったら、損失は16・6兆円に達する。これは、とても銀行業界が吸収できる損失ではない。結果として、体力の弱い銀行がバタバタとつぶれていくことになるだろう。

 銀行業界というのは、財務省にとっても、日銀にとっても、最も大切な天下り先だ。その天下り先を ・・・ログインして読む
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筆者

森永卓郎

森永卓郎(もりなが・たくろう) 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

1957年7月生まれ。東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、現在、経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。そのほかに、金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。

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