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「物価上昇2%」で現実になる国債利払費の危機

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 アベノミクスで円安・株高に沸く市場の関心は、次期日銀総裁・副総裁がどんな金融緩和の具体策を出すかに移ってきた。総裁候補の黒田東彦氏は4日の国会で「物価上昇2%を実現するためには何でもやる」と言明し、日銀の国債購入を拡大する方針を示した。

 

 しかし、国債を金融緩和の手段に使うやり方は、国債発行のモラルを失わせ、財政ファイナンスの疑惑を生む。加えて物価が上昇すれば、金利上昇が起きて国債利払費が膨らみ、財政の破たんリスクが高まるという強い副作用が出てくる。

 

 アベノミクスを褒めていたゴールドマン・サックスの元会長ジム・オニール氏が最近、「(自分は)日本の財政をしっかり注視していたのかという疑問に気づいた」と、手の平を返すようなコメントをして話題になっている。

 

 つい半年前まで、国民の関心事は財政の行方だった。750兆円もの国債残高(地方債含めると1000兆円)や、毎年1兆円ずつ増える社会保障費、年金の不安。ところが円安・株高になると、すべてが上手く行くような気分になり、財政のリスクは国民の頭の中から消えてしまった。オニール氏のコメントは、むしろ海外が日本の財政を懸念していることを伝えた。

 

 安倍首相のブレーンである浜田宏一氏の発言も少し変わってきた感じがする。2日の朝日新聞のインタビューでは、「インフレ目標が達成できなくても失敗ではない。むしろインフレにならず、景気と雇用を回復することが大事」と述べ、意外なことに物価上昇への警戒感をのぞかせた。

 

 2%の物価上昇は簡単ではない。昨今の消費者物価指数の下落は、工業製品とくに耐久消費財の指数が、この10年間で30%も下がったことなどが影響している。グローバル化の産物である。商店は安売りを競い、人々は生活防衛を考える。民間に給与引き上げを求めている政府自身が、公務員の給与引き下げにまい進している。2月末のロイター通信の調査では、賃上げに前向きな企業は1割にとどまっている。

 

 それでも日銀の緩和努力で物価が2%上昇したとしよう。すると応じて金利上昇が起き、長期金利は現在の1%以下から3%ぐらいになるだろう。問題は、そのとき国債の利息である利払費に何が起きるかである。利払費は一般会計の11%を占める大きい項目だ。

 

拡大グラフ1

拡大グラフ2

 

 グラフ1、2の青棒は過去の国債残高と利払費の推移を示している。国債残高は一貫して右肩上がりで増え続けているのに、利払費は2000年ごろから2010年ごろにかけて逆に少なくなっている。

 

 それは、この間長期金利が低下し続けており、財務省が過去に高金利で発行した国債の満期が来るたびに、足元の低金利の国債に順次借り換えたからである。この利払費が減るという低金利の恩恵(金利低下ボーナス)があったので、政府は安心して国債発行を続けることができた。

 

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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