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日本の左翼はなぜデフレが好きなのか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 国会同意人事である日銀総裁、副総裁についての3月14日(衆議院)、15日(参議院)の国会での採決結果は興味深いものであった。

 自民党は、少なくとも安倍晋三総理、山本幸三政務調査会副会長をはじめとする人々は、デフレが日本経済を停滞させてきた大きな要因であると認識し、リフレ政策を確実に行いたいと考えていた。また、同時に、民主党政権の失敗を見て、官僚組織と徹底的に対立すれば、面倒なことになるとも考えた。

 その結果が、財務省出身だが国際派でリフレ派の黒田東彦日銀総裁、20年以上にわたってリフレ政策を唱えてきた学習院大学教授の岩田規久男副総裁、どうせ上司の言うことは聞くだろうという日銀理事の中曽宏副総裁という組み合わせになったのだろう。これは、安倍総理として、絶妙の組み合わせと考えた結果なのだろう。

分かりやすい党と分かりにくい党がある

 公明党、国民新党、新党改革は自民党と一緒にやりたいし、特に反対する理由もないので自民党にならってすべての候補に賛同した。公明党がどのくらいリフレ派かはよく分からないが、公明党系の雑誌には、たびたびリフレ派が執筆していた。

 みんなの党は、リフレ政策に賛同していたが、官僚はダメということで財務官僚、日銀官僚出身者に反対して、岩田氏にだけ賛成した。日本維新の会は、リフレ政策に賛成で、黒田氏と岩田氏に賛成して、これまで白川方明前総裁のデフレ政策に同調していた中曽氏には反対した。以上の理屈は理解できる。共産党は、すべての候補に反対した。これはこれで首尾一貫はしているのだろう。

 分からないのは、黒田氏、中曽氏に賛成し、岩田氏に反対した民主党と、中曽氏だけに賛成した生活の党、みどりの風、社会民主党である。

 民主は、リフレに積極的すぎる、日銀法改正を唱えているとして岩田氏に反対して、財務官僚、日銀官僚に賛成した。官僚とケンカをすると面倒なことになると反省したのだろうか。確かに、政権を取っているときは、部下である官僚とケンカをすると面倒だが、野党になったら官僚とは敵の部下である。敵の部下ともケンカできなくてどうすると私は思う。

 また、民主党には前原誠司氏のように、政権にいた時には金融緩和に積極的だった有力者もいる。前原氏が何を言っても日銀が聞かなかったのは、日銀が独立していたからで、日銀法を改正していたら、聞かざるを得なかっただろう。

 民主党がリフレに反対で、デフレが良いと思っていたのなら、少なくとも10年間以上リフレ政策を唱えていた黒田氏にも反対すべきだった。結局、民主党は、

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