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少子化時代の就職活動、人材開発は社会の責務(下)

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 昔、社内でも辣腕の管理職と冗談まじりの立ち話で、意見交換したことがある。「1を言えば10のことをしてくれる部下が欲しい」と私が話題を提供したとき、「100」との返事が返ってきた。彼女は管理職、専門職、そしてママも兼ねていた。「100」というのはちょっと大げさなたとえである。管理職が描く勝手な理想の部下である。現実には、経験者を中途採用しても、そんなスーパー部下はみつからないもので、運よくみつけられたとすれば、部下と管理職を交代した方がよいだろう。

 このように競争の厳しい会社や部門では部下を指導することを躊躇する人がいる。そうならないように、経営陣の指示のもと、総務、人事、企画など管理部門が、会社としてノウハウを文章化しておくことが重要である。会社も従業員100人も超えれば、文章化の努力を惜しんではいけない。立ち上げでコンサルタントに外注しても更新を怠ってはいけない。「忙しいから育てられない」では管理職失格である。

 さて、新卒の話に戻る。採用する大企業からすれば、大学名や学部名の指標性が低下したことを意味する。有名大学の伝統学部から採用しても、満足できる人材を充足できない実態がある。エントリーシート、WEBなどの筆記試験、そして複数回の面接と丁寧に人選していく。親の世代は民間企業で筆記試験とは縁遠かった。しかも需給バランスが崩れ、インターネットの普及も触媒になり、大量の応募者から「逸材」を探索するのに多大な時間とコストがかかる。そして「逸材」の学生は当然ながら、複数の内々定を確保し、採用までに逃げられるリスクも高い。そして採用しても離職リスクも高まった。

離職率の「七五三現象」をご存知ですか

 雇用関係で「七五三現象」と呼ばれる新語がある。就職3年後の離職率が中卒7割、高卒5割、大卒3割という厚生労働省の調査がある(http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/24-02.pdf)。これでは、残業・休日出勤のほか、全国各地を飛び回る採用担当者の激務が報われない。

 企業は採用・教育の負担が増大したことで、大学教育、入試方法、そして付属の中高システムまで、文句のひとつやふたつも言いたいところだろう。

拡大図表1

 経団連が会員企業に対する新卒採用のアンケートにも内々定の辞退率が含まれている(図表1)。10%未満との回答は、2010年3月卒業者の38・8%から2012年には27・5%に減少し、その一方で10%以上の回答が2010年3月卒業者の58・6%から2012年には70・0%に増加している。

大企業、大学からの採用基準の明確化に関する要望にNO

 同じアンケートで、企業側の採用基準の明確化に関する大学等からの要請に対する回答もある。2012年3月卒業者調査では、「必要と思わないが」は前年の18・1%から42・1%へと大きく増加している。他方、「必要と考えており、明確化に努めている」は32・7%からも25・1%に減少している。

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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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