2013年03月29日
キプロスの銀行危機はとりあえず収束したが、金融の問題が政治的な思惑に振り回される結果となり、欧州安定化に向けた道のりの険しさが浮き彫りとなった。
90年代後半の日本の金融危機では、政府や当局の対応がToo Little 、Too Late と海外から批判された。今回のユーロ圏17カ国の対応は、それに加えてToo Risky といえるのではないか。
キプロスの銀行が大幅な債務超過になることは、ギリシャ国債について民間投資家に損失を求めた2011年の時点で予想されたことだった。当時キプロスの最大手の2銀行は、コアTier1資本を大幅に上回る額のギリシャ国債を有していた。その後、ギリシャやキプロスの国債価格の低下、ギリシャと国内での民間向け貸出の貸し倒れ増加から、両行の損失はコアTier1の2.5倍程度に膨らんでしまった。
キプロス政府がユーロ加盟国に支援要請を出したのは9カ月前のことだが、支援策はなかなかまとまらず、しかも金融関係者を驚かせる内容だった。前例にない点として以下の3つがある。
第一に、銀行の債券保有者が損失を受けない一方、預金者はすべて銀行税という形で、損失を負担することが提案された。
預金者に厳しい対応となったのは、多額の資金を緊急に徴収する必要があったことに加え、高利回りを享受しているロシアの預金者と、他のユーロ圏の納税者の利益をどうバランスさせるのかという政治的な配慮があったと推測される。
預金保険でカバーされている小口預金者にも税金を課すという当初の案は、国民の強い反対もあって議会で否決され、結局は、2つの銀行の株主、債権者、大口預金者の間で損失を負担することに落ち着いた。
しかし、預金者に一律税金をかけるという当初案が提出されたことの衝撃は大きかった。銀行が破綻に陥った場合、株主、劣後債保有者、シニア債保有者、預金者の順で損失を被るのが一般的である。こうしたルールが破られると、投資家にとっては予見可能性の低下につながり、投資を抑制する要因となる。今後は、ユーロ圏の統一した銀行監督の確立と、政治的な利害に左右されない明確なルール作りが求められる。
第二に、銀行の救済に際して、
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