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キプロスはアイスランドに学びユーロから離脱すべきだ!

吉松崇 経済金融アナリスト

拡大ニコシア中心部にある、分割・整理が決まった「ライキ銀行」の支店では、店舗に入る順番をめぐって押し合いも起きた

 「金融危機には三種類ある:(1)流動性危機(“Crisis of liquidity”),(2)支払い不能危機(“Crisis of insolvency”)、そして(3)愚かさの危機(“Crisis of stupidity”)」これは、国際金融論の泰斗でIMFのチーフ・エコノミストを務めた故マイケル・ムッサ・シカゴ大学教授の警句であるが、キプロス危機には、どう考えても(3)が一番当てはまりそうだ。

 3月16日(土曜日)にキプロス政府とEUが合意した銀行救済策の内容が明らかになると、キプロスでは銀行の取り付け騒ぎが始まり、キプロス政府は全ての銀行の休業宣言を出さざるを得なくなった。それはそうだろう。救済策のなかに「預金残高10万ユーロ以下の小口預金にも、6.7%の預金税を導入する」という項目があったのだから、預金を引き出そうとして銀行に駆けつけた市民の行動は、全く合理的である。他のユーロ圏の諸国と同様、キプロスでも預金残高10万ユーロ以下の小口預金は預金保険の対象である。預金をすることで課税されるくらいなら、タンス預金のほうが良いに決まっている。

 キプロスの銀行の総預金残高は、10万ユーロ以下の預金保険対象の小口預金が300億ユーロ、預金保険対象外の大口預金が380億ユーロ、合計680億ユーロである。EUがキプロスに求めた銀行救済資金は58億ユーロだから、大口預金に16%の課税をすれば、この金額が捻出できる計算である。

 報道によれば、キプロスのアナスタシアディス大統領が、タックス・ヘブン・ビジネスが崩壊するのを恐れて、大口預金に対する10%を超える課税を断固拒否し、その結果として「小口預金にも6.7%の課税」となった、といわれる。この大統領の振る舞いも信じ難いが、重要なのは、EUの高官と16カ国の蔵相が、これに一度は合意したことである。

 こんなことをすれば、パニックが起きるに決まっている。経験豊かな政府高官でもこのような初歩的なミスを犯すことがある、という事例である。この小口預金への課税は、キプロス議会が法案を否決したので、さすがに実現しなかったが、人々はこのエピソードを忘れないだろう。

キプロス処理策はドイツの思惑どおり

 キプロスはユーロ圏にありながら、タックス・へブンとして、海外、とくにロシアから預金を大量に獲得し、経済規模に比して、極めて大きな銀行を有する不思議な国である。タックス・ヘブンはマネー・ロンダリングの温床であり、 ・・・ログインして読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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