2013年04月08日
消費者物価の2%上昇を2年程度で達成するために「現時点で必要な政策をすべて講じた」と黒田東彦総裁は言い切った。なにがなんでも物価を引き上げよう、という心境だろう。
とくに、期間が長い国債買い入れの拡大は、量的拡大とともに、緩和をとことん続けてデフレを脱却するという強い決意を表明したことになり、「措置をすべて講じた」という言い回しは黒田さんの気持ちをよく表している。この措置さえ続けば、総裁の仕事はもう終えたも同然、と思っているだろう。
しかし、ねらい通り、かりに2年間でインフレ目標を達成できたとしても、そのことでただちに成功とはいえない。経済がデフレ不況を脱し、賃金も上がって国民が生活の向上を実感できるようになっているのだろうか。そうはならず、物価だけが上がり、株価も上がっていても、実体経済が不振のままでは、実質的にスタグフレーション(不況とインフレの同時進行)と呼ぶべき状況かもしれない。そんな状況は失敗と呼ぶしかない。
それでいいとは、黒田さんも思っていないはずだ。だが、景気を、未曽有の金融緩和やカンフル剤のような公共事業で無理やり持ち上げておいて「はい、好況です」といっても、だれも信じないだろう。円安と金融緩和・公共事業で株価を上げることはできても、それによる輸出産業の収益回復や資産効果だけで実体経済をどこまで良くすることができるのか。
まして、来年から消費増税というデフレ促進的な政策の実施が控えていることが実体経済にどんな影響を及ぼすのか。そうした点が今のうちから考慮されねばならないのではないか。
すでにこの欄で書いたように、雇用と消費・投資を増やすための策こそが真のデフレ対策である。その意味で、本来は雇用創出とイノベーション促進効果が大きいエネルギー革命を推進するために、脱原発を進めるべきである。さきに死去した加藤寛・元政府税調会長もそうした観点から即時脱原発をテコにした経済発展を訴えていたことを政府・自民党関係者はよく考えるべきである。
成長戦略としての規制改革の検討もいいが、
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