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黒田日銀の衝撃――わずか2週間で成し遂げられた金融政策の「レジーム・チェンジ」!

吉松崇 経済金融アナリスト

 「100点、いや120点!!マーケットが期待はしていたが、おそらく無理だろうと思っていたことが、全て実現した」「全ての項目で、市場の予想を大幅に上回った。バーナンキFRB議長を超えている」

 これらが、4月4日、黒田新総裁のもとで初めての金融政策決定会合の結果を伝える日銀のプレス・リリース、「『量的・質的金融緩和』の導入について」に対する、メディアが伝えた金融市場関係者の反応である。実際、この発表の前には、市場参加者は、黒田新総裁が唱える「大胆な金融緩和」が実現するかどうか、懐疑的になっていたので、為替市場は円高に振れ、株式市場は下落していた。

言行一致の黒田日銀

 「質・量の両面で、大胆な金融緩和を推進する必要がある。」「金融政策の枠組みが非常に分かりにくいものになっており、これをシンプルなものにしたい。」「残存期間の長い国債も購入対象として、イールド・カーブ全体の低下を促す。」「リスク資産の購入も検討する。リスク・プレミアムに働きかける必要がある。」 これらは、3月21日に就任した黒田新総裁が、26日に衆議院金融財務委員会に出席した際の発言であるが、注目すべきは、これらの発言が、4月3日-4日の政策決定会合で、全て実現していることである。

 具体的に見てみよう。日銀の「量的・質的金融緩和」の中味を整理すると;

(1)政策オペレーションの操作変数をマネタリー・ベースに一本化する。その為、白川前総裁のもとで、マネタリー・ベースの内枠として設定していた「包括緩和」のための「基金」を廃止する。マネタリー・ベースの達成目標は、2013年末に200兆円、2014年末に270兆円。(2012年末のマネタリー・ベース-実績-は、138兆円)

(2)これまで、残存期間の短いものに限っていた買い入れ対象の国債を、最長40年ものまでとし、買い入れる国債の平均残存期間を約3年から、約7年に延長。長めの金利にも、働きかける。

(3)リスク・プレミアムに働きかけることを念頭にETF及び不動産投資信託(リート)を買い入れる。

(4)以上の措置を、2%の物価安定の目標が安定的に維持される時点まで継続する。

 このように、黒田総裁の発言が政策として実現して行けば、金融政策のクレディビリティーは、否が応でも高まる。「トゥーリトル・トゥーレイト」であるとか、「自ら設定したインフレ・ターゲットすら、真面目に取り組まない」(ゴールドマン・サックス投資顧問のジム・オニール氏)と揶揄された白川日銀とは正反対である。

そして、この「量的・質的金融緩和」の本質を、鋭く言い当てているのが、ファイナンシャル・タイムズのコラムニスト、ガヴィン・デーヴィーズ氏のこのコメントだろう。

「これは、過去20年間の日銀の金融政策に関する言説を全て否定するものであり、政策哲学の大転換である」

(“Bank of Japan follows the Fed, on steroids” by Gavyn Davies, Financial Times, April 4, 2013)http://blogs.ft.com/gavyndavies/2013/04/04/bank-of-japan-follows-the-fed-on-steroids/

 黒田総裁は、就任後僅か2週間で、金融政策のレジーム・チェンジを成し遂げた。このスピード感と言行一致が、 ・・・ログインして読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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