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高額ブランド品と消費格差の拡大

多賀谷克彦 朝日新聞東京本社経済部長

 「50万円台の時計が好調だ」「今後、商談中の絵画など高額品の売上高が期待できる」

 2012年度の百貨店決算発表の席上、経営者の口から久しぶりに明るい話が相次いだ。全国の百貨店売上高(既存店ベース)は1、2月と連続して前年実績を上回った。3カ月連続となると、自民党が「郵政選挙」で圧勝した2005年以来になる。

 動きが良いのは、生活必需品とは言い難い宝飾品や高級腕時計、欧米ブランド品。大丸松坂屋百貨店の場合、欧米ブランド品の売上高は、昨年12月以降、月を重ねるごとに勢いが増し、3月は前年同月比19%増。しかも、この間、円安による値上げが相次いでも減速する気配は感じられないという。

 裾野も広がりつつある。3月の婦人服は同11%増。長らく低迷の続いたファッションにも変調の兆しが見える。好調なのは、鮮やかな色合いの服や柄物パンツ。「百貨店の場合、色柄モノが売れるのは景気のよくなる兆し。ダメになるとモノクロになる」とJフロントリテイリングの山本良一社長は消費者の志向を語る。

 株高による消費者心理の変化は「資産効果」と呼ばれる。SMBC日興証券によれば、有価証券の保有割合では60歳以上が8割近くを占める。働き盛りの40代は5・5%、30代は3%に過ぎない。過去の景気回復局面でも、消費の先導役は彼らだった。百貨店では「外商顧客」と呼ばれる得意客、いわば50代以上が中心の富裕層だった。

 ところが、今回の株高局面では、

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