2013年04月24日
ハーンドン氏に宿題として割り当てられたという事実がこの論文の影響力を物語ってもいる。経済学における再現について論じた労働経済学者のダニエル・S・ハマーメッシュ(テキサス大学オースティン校)によれば、著者が著名であればあるほど、再現される機会が多くなるという(Daniel S. Hamermesh “Viewpoint: Replication in Economics,” Canadian Journal of Economics, Vol.40, No.3, pp.715-733)。
■ラインハート、ロゴフも素早く反応
ラインハート、ロゴフも素早く反応した。彼らは、データの集計ミスなどは認めるものの、高債務国と低成長との相関関係は基本的に崩れない、また自分たちと同様の結論に達している他の研究もある、だから論文の主張は依然として維持されている、というものだ(“Reinhart-Rogoff Initial Response,” Money Supply, April 16, 2013.http://blogs.ft.com/money-supply/2013/04/16/reinhart-rogoff-initial-response/)。
英フィナンシャル・タイムズ紙のギャビン・デイヴィースによるブログ記事を参考にしてまとめると、現在までのところこの事件から得られた事実は次のようになる(Gavyn Davies “How much of Reinhart/Rogoff has survived,” April 19.http://blogs.ft.com/gavyndavies/2013/04/19/how-much-of-reinhartrogoff-has-survived/)。
■事件から得られた事実
1.ラインハート=ロゴフ論文で、もっとも衝撃的な結論としてとらえられているのは、90%で成長率が急激に下がるという部分だ。しかし、これについては平均値ではたしかにマイナス成長になることは示しているが、中央値ではラインハート=ロゴフの研究でも1・6%であり、衝撃度は小さい。ハーンドン=ポーリン=アッシュ論文では、平均値の計算の誤りを指摘しており、成長率が急激に下がるという主張は維持されなくなった。
2.この違いは、エクセル表の間違いよりも、ラインハート=ロゴフの計算方法の違いなどに起因している。
3.1にも関わらず、高債務比率と低成長の間には相関関係があることは残っている。
4.クルーグマンが指摘するように、相関関係があるからといって因果関係は定まらない。
5.ではどちらの因果関係がありうるのか。アリンドラジット・デューブ(インド工科大学)は、現在の債務比率は、過去の成長率と将来の成長率のどちらを予測する力が高いかを推定している。かりに将来の成長率の予測力が高ければ、
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