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就活後ろ倒しで就活はむしろ長期化する

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

 3月半ばから話題になっていた、「就活時期の後ろ倒し」案だが、4月19日(金)に安倍晋三首相が経済団体首脳と会談し、正式に打診。各団体とも容認する姿勢を見せたため、確定的になった。2016年卒より就活は大学3年生の3月より採用広報活動がスタートし、大学4年生の夏に選考が行われる形になると見られている。

 私は以前からこの案について反対の姿勢を貫いていた。一見すると、大学生を救いそうで、全く救わないからだ。日本における大卒就職の歴史は、時期論争の歴史であり、それは何度も建前のルールを水面下で破ることのくり返しである。

 経団連の倫理憲章には法的拘束力も罰則規定もない。紳士協定という名の、正直者がバカをみる決まりである。そもそも、時期の問題ではなく、出会い方、雇い方などを変えなければ学生は救われないし、現在の長期化・早期化・肥大化・煩雑化したうえに、大学を卒業したからと言って就職することが約束されない就活の課題というのは少しも解決されない。

 とはいえ、経済団体首脳が容認する姿勢を見せたことから、この流れは確定的である。ただ、やや意地悪な見方かもしれないが、就活の早期化・長期化による大学生活の阻害を解消するという建前のもとに行われる今回の取り組みは、次のようなマイナスシナリオにつながるのではないかと私は懸念している。それは、就活のますますの早期化・長期化である。

 大きなポイントとなるのは「就活」とは何か、ということである。今回の「就活後ろ倒し」とは、「募集広報活動」と「選考活動」の後ろ倒しである。ここが実はポイントで、企業においては形を変えた早期接触、学生においては就活を有利にするための早期からの取り組みが活発になるのではないだろうか。

 これから起こる、悲劇について大胆に予想することにしよう。

インターンシップが青田買いの場に

 これは既に起こっている変化である。企業はインターンシップによる早期接触による優秀層の囲い込み、認知度アップに注力するだろう。インターンシップは学年を関係なく、主に夏休みと冬休みに行われるようになる。通年型のインターンシップがより増える可能性もある。インターンと、選考活動は別という言い方をするだろうが、早期接触には変わりない。結局、就活的なことはむしろ早期に行われるようになるだろう。

キャリア支援企画という名の接触が増える

 これも既に起こっている変化である。「就活ではなく、キャリア支援のための企画です」という見せ方で、実質は企業説明を行い、早期接触するようなかたちの企画が増えるだろう。リアルな場でのイベントの他、ソーシャルメディアなどでのアプローチも行われる。

早期選考型企業はなくならない

 前述したように経団連の倫理憲章には法的拘束力はない。これに賛同しない企業も多数存在する。外資系企業やベンチャー企業などは規制しようがない。ファーストリテイリングのように、

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