2013年05月20日
安倍晋三首相は5月17日、3本目の矢である成長戦略第二弾を発表した。キーワードは“世界に勝つ”である。農業については、競争力を強化し、今後10年間で農業所得を倍増させるとした。そのための政策として、次の、輸出倍増、6次産業化、農地集積による生産性向上の3つを挙げた。
(1)国や品目ごとに輸出戦略をつくって、2020年までに農林水産品の輸出額を1兆円に倍増する。
(2)農家が生産から加工、販売までを担う6次産業化(1次、2次、3次の足し算(掛け算)で6次産業という)を支援して農産品の付加価値を 高め、10年間で市場規模を現在の1兆円から10兆円に拡大する。
(3)都道府県段階に農地の中間的な受け皿機関である公的な機構を新たに設置し、農家からこの機構が農地をいったん借り受けて、必要があれば区画を大きくしたり、水路などを整備したりして(農業基盤整備事業という)、大規模農家や農業法人などの農業の担い手にまとまった形で農地を貸しつける。
安倍首相は「農業の構造改革を今度こそ確実にやり遂げる」、「強い農業を作る」と訴えた。所得とは、売上高からコストを引いたものだ。(1)と(2)の政策で売上高を増やし、(3)でコストを下げて、所得を増やそうというものである。売上高を増やしコストを下げるという方向は間違っていないし、当然でもある。
しかし、意気込みは買うが、これでは、農業所得は倍増できない。それどころか農業所得の長期低落傾向に歯止めさえかけられないだろう。農業について具体的な政策として掲げた3つの政策(いわば“農業の三本の矢”)は、いずれも過去効果が上がらなかった政策のリメイクだからである。
輸出戦略について見よう。
これは、前回の安倍政権の政策のリメイクである。前回は、2013年までに農林水産物・食品の輸出を1兆円に拡大することを目標とした。農林水産省も、
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