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これで農業所得の倍増は無理、全てリメイクだった農業成長戦略の“三本の矢”(下)

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 農業の「6次産業化は、民主党がマニフェストに大きく掲げた政策だった。6次産業化のための官民ファンド法も成立し、そのための機構も発足している。しかし、民主党政権が提出した同法案は、国会で自民党から大幅な修正が加わり、機構の運営は農協の意向が強く反映されるものとなった。ある地方銀行の頭取は、「あれでは自由にできないので、私達は民民ファンドを作ります」と言った。

 6次産業化自体救世主にはならない。農閑期の遊んでいる時間を利用するために、加工や民宿を行うことは農業経営上望ましいことである。しかし、農家のほとんどは兼業農家だ。兼業というよりサラリーマンが本業である兼業農家にとって、加工等を行う時間はない。6次産業化を行える農家は限られる。

 また、これまでも、農家がモチやジャムを作ったり、農家民宿を行ったりして、6次産業化を行ってきた。しかし、それ以上の展開はなかなか厳しい。コメの集荷も行っている、ある主業農家に言わせると、「プロの加工業者、外食企業、ホテル業者がやってうまくいかないものを、おれたち農家がやってうまくいくものか。」伊賀の里モクモク手づくりファームや千葉県和郷園などの成功事例もないわけではないが、まだ点にとどまっている。

 最後に、農地の集積である。

 これは1970年から40年以上実施している“農地保有合理化事業”のリメイクである。やっていることは、今回の政策とほぼ同じで、農家から農地を買い入れたり借り入れたりして、農地をまとめて、これを規模拡大しようとする農家に売り渡したり、貸し付けたりしている。この事業を行う法人を農地保有合理化法人と言う。

 都道府県段階の農地保有合理化法人としては、47都道府県すべてに公社が設置されており、主として農地の売買事業を行っている。また、市町村段階でも、市町村や公社、農協などが農地保有合理化法人として、主として農地の貸借の事業を行っている。ただし、効果は上がっていない。農地面積は全国で450万ヘクタールあるが、2005年以降の事業実績をみると、毎年農地の売買が7千から9千ヘクタール、農地の貸借が1万2千から1万6千ヘクタール程度にすぎない。

 これまでの農地保有合理化事業とは異なり、今回検討されている機構は、

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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