2013年06月10日
現在、5月23日以来株価が下落し、為替が対ドルで上昇している。すでにして、市場ではアベノミクスの崩壊うんぬんをいう声が出ている。
崩壊そのものは時期尚早であろう。これは昨年9月の時点でかりに安倍晋三氏が自由民主党の総裁に選ばれていなかったとしたらどうだったかを考えてみればよい(これを専門的には「反実仮想」と呼ぶ)。
安倍氏が総裁にならなければ総理大臣に選ばれることもなく、総理大臣には自民党の別の誰かがなっていただろう。その人物が誰であれ、アベノミクスの「第一の矢」は存在しなかっただろう。日銀総裁に、今の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁ら、リフレーション政策にコミットしている人々が選ばれたとは思えない。
今頃私たちは、1ドル60円台への突入や、株価7千円台を議論していたかもしれない。実を言うと、安倍氏が現在首相になっていること、アベノミクスが発動されたこと、そしてここまで「大胆な金融緩和」が実行されたことは、かなり確率の低い偶然の産物であった。
それに日本の株価の上昇は急激であった。ここまで日本株は半年間で80%近く上昇した。これは日本でもイギリス、アメリカでもあまり例がない。また、戦後の株式市場では、バブルの時でも10か月連続して株価が上昇したことはない。いわゆる上げ相場も、投資家が利益確定をしながら段階を踏みながら進んでいくので、何らかの調整は起こりうるということだろう。
ちなみに、かつてのデフレ不況からの脱出においても株価は急激に上昇する局面と一進一退を繰り広げる局面が生じた。
矢野浩一駒沢大学准教授は、
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