メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

金融緩和の目的は雇用と生産の拡大

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

金融緩和をすれば金利は上がる

 黒田緩和が長期金利をコントロールできないからアベノミクスは失敗だという人たちがいる。しかし、長期金利は長期的にはコントロールできず、金融緩和をすれば必ずいつかは上がるものである。

 金融緩和によって長期金利が下がるというのは時間軸政策という議論に基づいている。時間軸政策とは、政策金利がゼロになっても、中央銀行がゼロ金利を継続すると予想されれば、将来の金利も低下し、その結果、短期の金利の平均である長期の金利も低下するという議論である。

 しかし、その長期がかなり長いものであれば、これは誤りである。長期の金利が低下することによって、経済が刺激され、名目長期金利は上がるからである。

 金融緩和政策の金利に与える効果は、時間軸の効果ではなく、金融政策の流動性効果、所得・物価水準効果、フィッシャー効果の3つの効果で考えるべきである。

 まず、金融緩和政策によって貨幣が過剰になれば、金利が低下する。これは、流動性効果と呼ばれる。しかし、金利の低下は耐久消費財や資産の購入を刺激する。このような刺激は、一部は実質所得の増加となって、また一部は物価水準の上昇となって表れる。

 実質所得が増加すれば貨幣需要が増加し、物価の上昇は実質の貨幣残高を減少させる。したがって、名目金利は上昇する。これは所得・物価水準効果と呼ばれる。

 さらにフィッシャー効果がある。これはインフレ期待の上昇が名目金利を引き上げる効果である。これらの効果によって、金融緩和は長期的には名目金利を引き上げることになる。

 しかし、失業率が高く、デフレ予想が根強い状況における金融緩和は、最終的に名目金利を引き上げるだけでなく、予想インフレ率とそれによる実質金利の低下によって、実質生産を引き上げる。

金融緩和は生産を刺激している

 金融緩和政策の目的は、生産と雇用を引き上げることである。生産と雇用が本来のあるべきレベルになれば、金融を緩和しても名目金利が上がってしまい、経済を刺激しないようになる。しかし、それまでの過程では金融緩和は経済を刺激する。

 長期金利は0.8%から0.9%へと0.1%程度上がったようだが、物価連動債から計算される予想物価上昇率は0.8%程度上がっている。名目金利から予想物価上昇率を引いた実質金利は低下している。このことが経済を刺激するはずである。実際に、安倍晋三氏が総理になることが確実視された2012年12月から、輸出、生産は上昇し、雇用も好転している。

 株や金利は大きく動いているが、 ・・・ログインして読む
(残り:約566文字/本文:約1628文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

原田泰

原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)

 早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。

原田泰の記事

もっと見る