2013年06月19日
安倍内閣が成長戦略の一環として、職務発明制度の抜本的な見直しを明記した。企業の競争力を高める優れた改革といえるだろう。
そもそも、会社の従業員として賃金を受け取りつつ、会社の設備を使って取得された特許権が従業員に帰属するという法律自体に無理があった。こういう仕組みがあるのは先進国では日本だけである。
では、なぜ従来の日本では、こういう奇妙な仕組みが機能していたのか。それは、終身雇用の結果、労働者が会社をまたいで移動することが少なかったからだ。日本においては、就職するのは“ジョブ”ではなくその会社の“正社員”という身分である。だから、一度下駄を預けた以上、個人は会社ムラの一員として、組織最優先で滅私奉公せねばならない。過労死や長時間労働という日本企業名物の根っこもここにある。
もちろん、奉公にはご恩がつきもの。会社側も、従業員の年功に対して、のちのち出世という形で手厚く報いることで、両者の信頼関係は維持されることになる。バブル崩壊以前までの日本企業では、この暗黙の信頼関係がそれなりに機能していた。だからこそ、従業員の発明に対しては「原始的に個人に帰属し、企業が譲り受ける場合、相当の対価を払わねばならない」という曖昧な規定にとどまっていたわけだ。暗黙を明文化しようとすれば曖昧にならざるをえないものである。
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