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中国経済成長の先行き、新指導部はブレーキ踏む勇気を

津上俊哉(現代中国研究家)

 中国国家統計局は4月中旬、今年の第1四半期の中国GDP実質成長率が7.7%だったと発表した。事前の市場予想の8%を下回ったために世界の金融市場を失望させたが、海外と中国には「むしろ7.7%も成長しているのか?」という懐疑の声がある。

AJWフォーラム英語版論文

 李克強総理は遼寧省書記をしていた2007年、駐中国米大使に「経済評価で注目する統計は、電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つだけ。GDP統計は『人為的』で『参考用』にすぎない」と語ったとされる(ウィキリークス)。第1四半期の3つの統計を見た李克強総理も、GDP統計が示すほど経済の先行きを楽観していないと思われる。

 第1四半期の電力消費の対前年伸率は4.1%、景気の急減速が伝えられた昨年第3四半期と同じ低い伸び率に落ちた。3月単月では1.9%という低さだ。貨物輸送(トラック、鉄道、水路、航空の貨物輸送トンキロ数合計)は景気底入れが伝えられた昨年第4四半期の8.0%から6.3%へ、うち鉄道貨物は-5.3%から-1.3%に「改善」したが、トラック貨物は20.2%から12.3%へ低下した。

「熱い融資、冷たい経済」 資金はどこへ?

 李克強総理が注目する残る一つの指標、金融データだけは電力消費、貨物輸送量と異なる動きをした。金融データについては、最近、銀行融資以外の新興資金調達ルートである「シャドウ・バンキング」が急成長しているため、銀行融資データを見るだけでは不十分で、人民銀行(PBOC)が昨年から公表するようになった「社会融資総量」を見る必要がある。

 それによれば、第1四半期、3月末の銀行融資は昨年末に比べて3兆2千億元の伸び、銀行融資以外のいわゆる「シャドウ・バンキング」は2兆8千億元の伸びだった。金額では銀行融資の伸びの方が大きいが、1年前のそれぞれの数字は2兆6千億元と1兆2千億元だった。つまり融資増加額の対前年比は、銀行融資が23%に対して、シャドウ・バンキングは130%に達した。両者を合計した新規社会融資総量6兆元は1年前の3兆9千億元の58%増にあたり、激増と言って良い。

 資金調達はかくも熱いのに、実体経済は冷えている(「融資熱、経済冷」)。この統計を知った国家指導者は「資金は何処へ行ったのか」と下問した由である。

 答はシャドウ・バンキングがなぜ急増しているかを見れば明らかになる。資金の出し手と借り手の双方の視点から見てみよう。

シャドウ・バンキング、銀行預金を嫌う資金の出し手

 シャドウ・バンキングは手持ち資金の豊かな企業が、資金の出し手になっている。従来銀行に預金していた彼らは、いま規制金利制度により不当に低く抑えられた預金金利を嫌って預金したがらない。そこで優良顧客を失いたくない銀行が委託融資、信託融資など、高利回りの運用手段を仲介して顧客を繋ぎ止めようとしているのである。ほかに上場企業による社債発行も増加している。

 つまり、資金の出し手から見て、シャドウ・バンキングは高利回りの資金運用方法であることに意味がある。委託融資や信託融資の資金の取り手は、1~2年の短期融資に10%以上の金利を支払う必要がある。これは同等の銀行融資の基準利率より5割以上コストが高い。

 次に資金の借り手の視点から見てみよう。シャドウ・バンキングが急増するのは、

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