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 金利上昇は債券の評価損の拡大を通じて銀行の自己資本にマイナスの影響を与える。金利上昇を契機として金融機関の体力の格差が拡大し、再編が進む可能性もある。

大手銀行―金利の急騰は懸念材料

 日銀の金融緩和政策後、長期金利の水準は0.3%程度上昇し、またボラティリティ(変動率)は高まった。短期金利については当面低位に推移すると予想されるが、長期金利は物価上昇率がプラスに向かい、デフレ脱却の期待が高まれば上昇に転じていくだろう。

 金利上昇の金融機関への影響を見ると、大手銀行5グループについては11年度以降国債の保有額は減少し、またデユレーション(満期までの期間)についてもばらつきはあるが概ね抑制され(平均2.7年程度)、金利上昇への対応は進みつつある。ただし、メガバンクは過去2年間金利が下降する局面で業務純益の17%程度に上る債券関係損益を上げてきており、仮に同様の利益を追求する場合、不測の損失を計上するリスクが高まる。

 各行は日本や海外での貸出増加や証券、不動産関連の手数料増強により市場関連収益の減少をカバーする計画であり実現すれば業績の安定度は高まる。ただし、国内での貸出需要は依然弱く、また手数料収入は株価や為替などの影響を受けやすいため、計画通りに進むのかは不透明である。また国債保有については抑制気味とはいえ、依然約120兆円の債券を保有しており金利上昇の影響は少なくない。

 2013年3月期の5グループが抱える金利リスクは1%の金利上昇(並行)で約3兆円程度と推計している。景気の回復に伴い金利が緩やかに上昇していけば、貸出の増加や利ざやの改善が、債券の損失をカバーしていく。

 しかし、景気回復が遅れ、さらに財政規律への懸念や何らかのイベントによって金利が急騰した場合は最悪の展開となろう。公的部門を除いた国債市場の参加者は金融機関が多く(2012年9月末で64%)同一方向に動きやすい。市場の流動性が低下した中で大手行がポジションを調整すると、混乱が一段と強まる可能性がある。

地域金融機関-収益低迷から、金利リスクへの耐久度が低下

 地域金融機関については国債保有額は増加傾向にあり、またデユレーションも大手行に比べて長く(平均4年以上)金利上昇による債券価格低下の影響はより大きい。地域金融機関にとって国債からのクーポン収入は重要な収益源であり短期化には困難が伴う。さらに金利上昇のバッファーとなる収益は、貸出の低迷、貸出利ざやと有価証券利回りの低下から過去数年減少しており改善の兆しはみえない。

 地方の中小企業は円安のメリットを受けにくく、電気料金や原料価格上昇が重荷となっている。今後規制緩和などにより経済全体の成長力が底上げされれば、貸出増加につながる可能性はあるが、地域金融機関にとってアベノミクスのメリットを実現させるには相当な時間がかかりそうだ。

 またもう一つの懸念は、 ・・・ログインして読む
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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

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