2013年07月04日
中国で7月危機説が浮上している。今回は、中国共産党幹部たちの出世競争とシャドーバンキングと呼ばれるノンバンク問題で、危機説の背景を解説したい。
まず、中国には首長だけで4万以上のポストがある。31の省・自治区・直轄都市が地方政府の上位にあり、その下位の地方政府として、地レベル、県レベル、郷鎮レベルがある。首長に昇進できる年齢が定められており、下位の自治体から上位の自治体に行くほど、年齢が上昇する。つまり全国レベルで年功序列によって、人事制度が管理されているということになる。自治体の階級と党員の年齢によって、全国レベルの政治権力のヒエラルキーが確立している。
この自治体階級別年功序列人事は、最近の朝日新聞記事でも確認できる。浙江省嘉興市の共産党委員会副書記に就いた胡錦濤前国家主席の長男は41歳で、広西チワン族自治区平果県の副県長に就任したトウ小平氏の孫は28歳である。
そして、昇進の人事査定で重要視されるのが、GDP成長率である。同レベルの地方政府・同世代のなかでGDP成長率が高いか。前任者と比べてGDP成長率が高いか。このような比較もされてきた。
都市と農村の深刻な格差が問題視されるなど、GDP成長率至上主義が曲がり角に来ていた。事実、胡前主席は2003年10月の中国共産党第16期中央委員会第3回総会で、「科学的発展観」を打ち出した。「GDPの数字だけをむやみに追求せず、科学的かつ合理的な観点から、中国全体の持続可能な均衡発展を目指す」という考え方である。
しかし格差是正の路線は、世界金融危機によって大きく後退することになった。リーマンショック後の2008年11月、4兆元(約57兆円)に及ぶ大型の景気対策が発表された。金融緩和も含めて緊急の経済対策によって、極端な成長主義の継続を許してしまった。2009年、マネーサプライも前年比28.4%も増加している(図1)。しかも4兆元の7割は地方政府から支出されている。リーマンショックから5年が経過し、大型景気対策向けの融資の満期や借り換えが懸念されている。
次に、シャドーバンキングが問題化している。シャドーバンキングの役割は大きく分けて2つから構成される。まず
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