2013年07月06日
少し時間が経ってしまったが、大阪市の民間校長が3カ月で辞任した騒動は実に残念であった。
少し説明すると、大阪市の市立小中学校公募に応募し、4月に民間人校長に就任した住之江区南港緑小学校の千葉貴樹氏が6月25日に退職した件である。各メディアの報道によると千葉氏は「私が力を発揮できる場所とは違う」「配属先は小規模校で課題は基礎学力だった」「(子どもたちには)申し訳ないという気持ちではなく、残念な気持ち」と語っていた。
この件は、採用活動のわかりやすい失敗事例だと言えるだろう。突然辞任した千葉氏や、彼を登用した大阪市、および橋下徹市長への批判が集まっているようだ。ただ、私はそもそもの採用と定着のプロセスに問題があると感じた次第である。ブラック企業の手法同然なのだ。
私が気になったのは、千葉氏が辞めた際の発言である。報道によると、子どもたちの基礎学力に関する件や、給料が安い件などについて言及していた。
この発言の倫理的問題、特に子どもたちの基礎学力に関する件などには怒りの感情すらわいてくるが、私が言うまでもなく、批判が集中したようなのでいったんおいておこう。問題は、なぜこのような、言ってみれば当たり前の事実を採用時にすり合わせをしなかったのかという点である。千葉氏は想像以上だったという趣旨で言ったのかもしれない。とはいえ、このような事実は採用時に伝えておくべきことであり、千葉氏も事前に調べておくべきだっただろう。
民間企業においては、RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)といわれる手法が広がりつつある。「現実的な仕事情報の事前開示」という意味であり、企業が人材を採用する際に、求職者に対して仕事や組織の実態について、良い面だけでなく悪い面も含めた、ありのままの情報を提供することである。
簡単な例を挙げれば、「残業が多い」「土日に出勤することもある」「全国に転勤がある」「入社後数年は全員営業に配属」などのマイナス情報とも言えるものをインプットしておくのである。最近、リクナビ、マイナビなど就職ナビに出ている求人広告をみても、
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