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日銀短観からうかがえる景気回復シナリオの危うさ

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 黒田日本銀行下での第2回目の6月調査の短観の結果が、7月1日に公表された。

 その内の各数字には、大幅な円安・ドル高、ユーロ高、人民元高などで容易に予想されたことが、絵に描いたように表現されていると言えよう。

 第1は、輸出関連の比重が高い製造業にはプラス、国内需要志向の非製造業にはマイナス。

 第2は、製造業、非製造業の双方で、大企業にはプラス、中堅・中小企業にとっては横ばいか、マイナス。

 第3に、円安の効果は、既に出尽くしたと見られていることである。

円安による鉱工業生産指数の上昇

 まず、今年5月までの日本の鉱工業生産指数(2010年=100)の推移で、日本経済の景気の脈拍を見てみよう(ちなみに、同指数の基準年は、先月半ばの今年4月分の確報公表時から、2005年から2010年に変更された)。

 上記の新基準年系列を季節調整済で見ると、昨年11月の93.4で最近の底を見た後は、今年5月には97.8と、ちょうど半年間で4・4ポイント、率にすると4.7%上昇している。年率換算すると、9・6%の高率であった。 

 しかし、前年の同月の水準に比べた変化率を、季節調整前の原系列から算出してみると、 今年2月のマイナス10.1%から今年5月のマイナス1.0%と、依然としてマイナス圏にとどまっているのが見える。

 鉱工業生産指数の水準の上昇は、月次の通関輸出額(円換算)の水準の推移と、軌を一にしている。要するに、円安による輸出額の増加が、鉱工業生産指数の上昇を招来している構図である。しかし、日本の通関輸出数量も、米ドル換算の月次通関輸出額も、増勢どころか、低下傾向が止まっていないのが実状である。

 ちなみに、短観に回答した製造業の大企業では、2013年度の円/ドル為替レートを91円20銭(上期・91円25銭、下期・91円16銭)と想定している。

 今次の短観調査期間前後には、5月23日の103円台から6月17日の94円台への急激な円高への転換があった。この状況では、輸出関連の大企業も、手放しの円安シナリオを前提として経営計画を画けないのが実状であろう。上記の為替シナリオが基本的な前提となって、売上高、経常利益の水準の変化率が出て来ているのである。

非製造業を含めれば大きくない増益率

 株式価格の変動率と関係が深い経常利益の水準の変化率は、製造業の大企業では、2013年度には14.6%増と、2012年度の12.4%増に比べて、増益率が若干の上昇を見るとしている。増益率が若干の上昇を見るのは、素材業種の増益率が、昨年度のマイナス22.4%から今年度のプラス6.0%と、大幅に改善するからである。一方、加工業種の増益率は、昨年度の44.2%から今年度の18.8%へと、低下する。

 加工業種の増益率をみると、1昨年度の水準に比べて、今年度の経常利益の水準は 71.3%高となり、今年5月に付けた日経平均株価の高値時の昨年11月の水準からの上昇率を反映したものになっている。

 しかし、非製造業を加えて見ると、全く異なる増益率のパターンが浮かび上がる。

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筆者

齋藤進

齋藤進(さいとう・すすむ) 三極経済研究所代表取締役

(株)三極経済研究所・代表取締役。1950年静岡県生まれ。73年京都大学経済学部卒、73年より、国際関係研究所客員研究員(台北)、76年ミシガン大学大学院経済学博士課程修了。フォード財団特別研究員、ウォールストリートで、金融機関、機関投資家、国際機関向けの独立経済コンサルタント業、クレディ・スイス銀行(東京)経済調査部長兼チーフ・エコノミストなどを経て、1990年より現職。「平成不況」の名づけ親として、多くの経済政策論文・論説を発表。著書に『平成不況脱出』(ダイヤモンド社)、『平成金配り徳政令』(講談社)など。世界の100人のTop Political Columnistにも選ばれている。 【2016年8月WEBRONZA退任】

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