メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

 在日韓国・朝鮮人が多く住む東京・新大久保で、大音響で「半島に帰れ」「韓国人をたたき出せ」と叫ぶデモ行進が行われている。中心になっている「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と、それに対抗する「レイシストしばき隊」との間で小競り合いがおき、双方から逮捕者が出る騒ぎにも発展している。早くから在特会を取材し、この問題の第一人者であるジャーナリストの安田浩一に在特会とジャーナリズムを聞いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ――講談社ノンフィクション賞と日本ジャーナリスト会議賞を受賞したご著書の『ネットと愛国』はたいへんな力作だと思います。これを出版されたころ(2012年4月)と比較して在特会の存在は相当大きくなったのではないですか?
《在特会は差別的な言葉を使って街宣活動を行う日本最大の「市民保守団体」。「弱者のふりをした在日韓国・朝鮮人がさまざまな特権を享受して、日本人を苦しめている」と主張している》

安田浩一氏拡大安田浩一氏

  安田 在特会の注目度が増し、存在感は高まってきました。しかし、それは、新大久保におけるデモで彼らの文言が激しくなって注目度を増したのであって、別に彼らが勢力を大きく広げたわけではない。

 僕が去年本を書いたあとでも、在特会はそれほど認知された存在ではなかった。それが最近はテレビや新聞・雑誌の報道を通じて、それまでネットの世界でしか語られなかった彼らが突如リアルな姿として認知されだしたのだと思います。

 ――警視庁は6月16日、在特会の桜井誠会長ら関係者4人と、対立する「レイシストしばき隊」関係者4人の、計8人を暴行の容疑で現行犯逮捕しました。殴り合いまでに発展して逮捕者が出るような展開になったことをどう思いますか。

 安田 在特会の新大久保でのデモは2年前から行われていたのですが、今年に入ってデモのスローガンが「在日コリアンを殺せ」「首をつれ」「毒を飲め」というきわめて過激な言葉になっていったのです。それに対して危機感を覚えた人たちが何とかできないかと声をあげ、今年2月から在特会のデモに対してカウンター(対抗措置)をかける人が出てきた。それまでは「一部の過激な人がなんか変なことをやっている」という風に見られていた在特会の行動が、さすがに「死ね」「殺せ」という言葉が常態化するようになって、「これはおかしい」と。それで抗議の意思を示そうと今年2月からカウンターと呼ばれる人たちが在特会デモを迎え撃つ形になったのです。

 ――その中心勢力が「レイシストしばき隊」ですか?

 安田 違います。「しばき隊」はカウンターの中では一部にすぎなくて、あそこに集まっているのは、ほとんどが個人です。その集まり方だけを見れば、在特会のデモと同様、ネットで知ってツイッターやメールで連絡を取り合い、自然発生的に広がっている。

 ――毎週金曜日の官邸前反原発デモと似ていますね?

 安田 同じです。その中の一部が「しばき隊」です。あえて暴力的なにおいを発散させることに重きを置いて在特会を迎え撃つ。
 僕はそんな「しばき隊」を肯定しています。というのは、これから言うことはあまり知られていないのですが、在特会の新大久保デモで最も問題だなと感じることは、彼らがデモの後に行う「お散歩」と称する行為なんです。デモが終わった後に横断幕や日の丸を片づけて、そのあと「お散歩」として無届デモのようなことを新大久保でやってきた。新大久保の商店を行きかう女性客に突っかかって「竹島はどこの領土と思っているのか」「お前は在日か」などとケンカをふっかけたり、コリアン商店の商品が路上にはみ出ていることをとらえてアルバイトの留学生の店員に因縁をつけたりしてきたんです。買い物客からすると、突然からまれて戸惑っているうちに一斉に取り囲まれて罵声を浴びせられる。それで「朝鮮人を殺せ」と騒いで町の中を歩く。こういう行為にさすがに我慢がならない、せめてデモ後の「お散歩」はさせないようにしようと、「しばき隊」ができていった。

在特会のデモに抗議する人たちと警察官ら=2013年6月30日、東京・新宿区拡大在特会のデモに抗議する人たちと警察官ら=2013年6月30日、東京・新宿区

 ――じゃあ治安維持のため?

 安田 そうです。在特会が「お散歩」をすると「しばき隊」につかまってしまう、と。ですから意識的に暴力的なにおいを発散させて「お散歩」阻止を始めたのです。結果的にいま「お散歩」はできなくなっている。そういう点では「しばき隊」は、

・・・ログインして読む
(残り:約3579文字/本文:約5392文字)


筆者

大鹿靖明

大鹿靖明(おおしか・やすあき) ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

1965年、東京生まれ。早稲田大政治経済学部卒。ジャーナリスト・ノンフィクション作家。88年、朝日新聞社入社。著書に第34回講談社ノンフィクション賞を受賞した『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を始め、『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』、『ヒルズ黙示録・最終章』、『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』、『ジャーナリズムの現場から』、『東芝の悲劇』がある。近著に『金融庁戦記 企業監視官・佐々木清隆の事件簿』。取材班の一員でかかわったものに『ゴーンショック 日産カルロス・ゴーン事件の真相』などがある。キング・クリムゾンに強い影響を受ける。レコ漁りと音楽酒場探訪が趣味。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

大鹿靖明の記事

もっと見る