2013年07月16日
イデオロギー、階層などと支持政党が分かれる傾向がある欧米諸国と違い、日本では、支持政党が固定している有権者より支持政党なしの有権者が多数を占める。そもそも政党が多党化し、短命化もしている。
自民党がTBSを取材拒否にした。ジャーナリズム論的な是非の議論は別にして、政党や候補者としては、世論調査をはじめとする報道や世論の動きに敏感にならざるを得ないだろう。筆者の問題提起は、期日前投票普及により、選挙戦が事実上、短縮されてきているということの指摘である。
前週の週末、長崎市内で参議員選挙の期日前投票を済ませた。本人確認の手続きはいたって簡単である。宣誓書に、住所、氏名、生年月日を記入するほか、投票当日に投票できない理由を選択する。運転免許やパスポートなどの本人確認はなされなかった。投票はがきを本人が持参しているという性善説で成り立っている。マネーロンダリング防止などの要請から厳格化されてきた銀行や証券会社の口座開設の本人確認と比べると、簡単さは雲泥の違いである。
投票所を出ると、NHKの出口調査で呼び止められた。A4一枚のアンケート用紙には、投票行動、支持政党のほかの質問項目としては、インターネット選挙、アベノミクスについての質問があっただけだった。今回の争点が限られていることを改めて実感した。
投票というと昔の取材経験を思い出す。
期日前投票が不在者投票と呼ばれていた1986年7月に実施された衆参同日選挙で、高級外車が松山市選挙管理委員会までピストン運送して大量動員している光景を目撃した。当時の愛媛県警本部から歩いて数分程度の距離である。
白昼堂々、歩道にはパイプいすが置かれ、サングラス姿の男たちが選挙管理委員会に到着する人数をカウンターで数えていた。近寄りがたい光景で、望遠レンズ付きのカメラを支局に取りに帰り、向かい側のビルから選挙管理委員会前の動向を長時間観察することから取材が始まった。
その後、朝日新聞松山支局などの調査報道や警察の捜査で、大量動員に暴力団もかかわっていたことが明らかになった。捜査を指揮する県警幹部から「気をつけなさいよ」と声をかけられた
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