松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者
1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
風しんの感染者が1万人を超えた。風しんが怖いのは、妊婦がかかると先天性風しん症候群の子供が生まれることだ。風しんはワクチンで防ぐことができる病気で、米国では2004年に「根絶」されている。日本ではなぜ、風しんの流行が繰り返されるのか。厚生労働省は何をしているのか。立川、川崎、東中野の駅ビルでナビタスクリニックを運営する久住英二医師に聞いた。
――なぜ、風しんの流行が問題なのですか。
「今回の流行で、去年の秋から13人もの先天性風しん症候群(CRS)の子供が生まれています。2004年の流行から約10年間、国は風しん対策をしてきませんでした。ワクチンで防げる感染症なのに、先進国の公衆衛生行政としてはなっていません」
――風しんについて田村憲久厚生労働相は6月18日の閣議後記者会見(※1)で「患者はまだ1万人」と話しています。厚労省は問題視していないのではありませんか
「対策をとって来なかったことを失策と捉えていない大臣の姿勢は不誠実です。では、患者が何万人でたら対策をするのでしょうか?おたふくや水痘の対策もできていないから風しんは後回しだ、という言い分も不適切です。すべて、とうに対策してあるべき感染症です」
――とうに対策してあるべきとのことですが、なぜ、その対策ができていないのでしょうか
「風しんは、胎児に障害が起きることが問題でした。そこで、日本では女子中学生への集団接種を開始しました。しかし、風しんは幼児で流行するため、有効でなく、漸次的に接種対象を男子にも拡大し、今では幼児期に男女とも2回接種という方式に落ち着きました」
「そのため、いま34歳以上の男性は接種を受けておらず、免疫がない人々が少なく見積もって2割はいます。また、制度がコロコロ変わったので、23歳以上の男性は、本来受けるべき接種を受けていない人が多い」
――それは、今回の流行にどのように影響していますか。
「いま発生している風しん患者の77%は男性です、しかも20~40代が中心(※2)。これは、この集団の免疫が低いということを示唆しています」
――きちんとワクチンをうった女性は安心していられるのですね。
「ワクチン打ったからと言って、安心できません。ワクチンを1回受けても
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