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賃金上昇がデフレ脱却の核心/政労使が共同する時だ(上)―日本総研 山田久調査部長インタビュー

聞き手:編集長 矢田義一

 ――アベノミクスも争点のひとつとなっている参院選の投開票日が迫りました。アベノミクスについてはどう評価されていますか。

 そこそこ合格点かと思います。もちろん、実際にアベノミクスそのものに決まった形があるわけではありませんし、合格点というのは、これがラストチャンスだという思いもあっての評価です。最初は金融政策に偏ったかたちで始まったので、かなりリスクのあるものだと警戒しましたし、今も警戒心はもっています。ただ、安倍首相が成長戦略を出した時には、これが本丸だという言い方もしており、政策の重点を徐々にいわゆるリフレ的なものから構造改革的なものにシフトしてきているのではないか。そういう意味では、変化そのものは望ましい方向に向いていると判断しています。

山田久・日本総合研究所調査部長/チーフエコノミスト拡大山田久・日本総合研究所調査部長/チーフエコノミスト

 ただ、これをより確実に、成果を上げる形に変えていくことが大切です。そのためにも政策の重点を適切にシフトすることが重要です。また、政策として足らないものも多数あります。例えば、財政の再建、社会保障の改革などは、ほとんど未着手です。

 日本の経済、財政状況は厳しい。さきほど言いましたが、もうこの機会を生かすしかないという覚悟で、柔軟に見ていく必要がある。もちろん、金融政策に過度に依存することへのリスクはあり、その警鐘は鳴らさなくてはいけないと認識しています。ただ、金融政策もある意味、初動として期待に働きかけると言う点では効果はあった。それは認めてもいい。しかし、その持続性に関してはかなり疑問がある。金融政策にあまり大きく頼ると副作用が大きいので、その部分の修正はきっちりやっていかないといけません。

 ――金融緩和を重視する人たち、いわゆるリフレ派も金融政策だけで成長するとは言っていませんね。

 そこはある意味、一定の政策が実行され、結果が出ているところもあるので、リフレ派も実体経済を重視する人たちも一定程度の見解の収束が見えているのではないでしょうか。金融の役割と実体経済への働きかけのどちらに重きを置くかの違いであって、お互いにすべてを否定するものではないでしょう。私は構造改革というか、実体経済の方が大事だという立場です。金融政策というのはあくまでも時間稼ぎでしかないと思っていますから、実体経済を変えていく方向にシフトを今後どこまでできるのか、注視しています。それと、まさに、財政政策の副作用。これは金融政策の副作用でもありますけど、財政再建の問題を今後、具体化していくということですね。その時に、中身でいうと、社会保障の改革が大事になってくると思います。

 ――日本総研のリポートによると、生産年齢人口の約3割がインフレを知らない世代ということです。こうした経済成長の実感を知らない若い人たちを中心に非正規雇用の人たちが増え、デフレのおかげで何とか日々の暮らしをしのぐような現実がある。一方、年金で暮らす高齢者も「物価が上がるなんてとんでもない」と言う。双方ともいまはデフレで何とか生活している。こうした状況を前に、物価を上げる、つまり脱デフレを実現しようという意識をもってもらうのは大変難しいのではないでしょうか。

 一見すると、物価が上がるというのは、よくないことに見えます。実感としてもそうかもしれない。ただ、経済のメカニズムとして考えた時に、デフレが続く以上財政再建はあり得ません。税収が絶対増えませんので。極めて大幅な歳出カットをしていくということもありえますが、それをやっているとさらにデフレ圧力がかかって、経済に縮小スパイラルがかかってしまいます。これは、すでに今日のヨーロッパで経験済みの話ですから。

 従って、デフレから脱却するということは必ずやらなくてはならない。そうでないと、財政赤字をどんどん増やし続け、若い世代につけ回しをすることになってしまいます。それから、実は、非正規の人たちの問題も、なぜ非正規かというと、デフレの結果というところが多いわけです。結局、実質金利が高くなることなどで企業がリスクをとれないということですから、正規の社員の雇用を増やすことができなくなります。

 経済の専門家の眼から見れば自明ともいえる、デフレのそういうメカニズムは一般の感覚としてわかりにくい。将来を展望したデフレ脱却の重要性というところを、政治なり政府がきちっと説明しないといけません。

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