最近、一部の有名企業について、ブラック企業と思うかどうか質問されることがある。そんな時、筆者はあえて質問で返すことにしている。
「なぜ処遇的には全然マシな大企業のアラ探しばかりやってるの?中小企業なんてもっとひどいところばっかりじゃない」
今のところ納得できる返答が返ってきたことはない。というわけで、筆者の予想する答えを書いておこう。
メディアは誰も知らない中小零細企業がブラックなんて報じたってニュース価値なんてないから。
労働組合は(後述するように)ブラック問題を追及しすぎると自分達に火の粉が降りかかる恐れが強いから。左派団体は政治的な理由で大企業を叩きたいから。
そして一般の国民には「大企業はきっちり法律を守る義務があるが、中小企業は仕方ない」という身分意識が染みついているから。
と、多分こんなところだろう。筆者が巷に溢れるブラック企業議論に冷ややかなのは、そういう各々の事情が透けて見えるからだ。というわけで、あるべき論点をきっちり提示しておこう。
“ブラック”は終身雇用の副産物
日本には世界に類の無い終身雇用という制度がある。この超長期雇用を実現するため、日本企業には他国にはないいくつかのツールが与えられている。たとえば以下のようなものだ。
・労働時間に上限がなく、青天井で働かせることが可能
・有給休暇などを業務命令で制限可能
繁忙期には本来なら人を雇うことで対応すべきだが、
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