メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

山形農協カルテル事件で報道されない大きな問題

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 山形県の5つのJA農協がコメの販売手数料でカルテルを結んだとして、公正取引委員会が7月30日、調査に入った。

 これに関して、林農林水産大臣は記者会見で次のように述べている。「規制緩和等々の議論をめぐってですね、農協というのは独占禁止法が全く除外されてるんだというようなですね、まあ、事実誤認の議論がありまして、まあ、ある意味では、こういうことがきちっとですね、農協にもカルテルという疑いで公取が入るということがあり得るんだということが一つ明らかになったと、まあ、こういうことが一つはあるのかなあと、こういうふうに思います」

 農林水産省は、独占禁止法の適用除外問題など、農協について規制改革会議などでさまざまな注文をつけられる可能性がある。その予防線を張った発言だろう。これは林大臣の考え方というより、この問題について事前に説明した農林水産省の事務方の考えだろう。ウソではないが、農協と独占禁止法を巡る根本的な問題から話をずらしている。

 まず、基本的な法律制度を説明しよう。

 独占禁止法では、カルテル(共同して生産したり、販売したりすることなどで競争を制限する行為)は禁止されている。しかし、小規模事業者等が協同組合を組織する場合には、独占禁止法の適用除外が認められ、カルテル行為は許されている。

 この趣旨は次のようなものである。単独では大企業に伍して競争していくことが困難な小さい事業者や交渉力の弱い消費者も、共同して生産や販売、購入をすれば、形式上は独占禁止法に違反することになる。

 したがって、このような事業者などが互いに助け合うことを目的として、協同組合を組織した場合には独占禁止法の適用を受けないようにして、市場で有効に競争したり、取引したりすることができるようにしたものである。あくまでも小規模事業者の救済である。

 しかし、それでは、今回山形県の農協はなぜカルテルを結んだとして独占禁止法違反を問われたのだろうか。

 独占禁止法の規定(同法第22条)では、

・・・ログインして読む
(残り:約1259文字/本文:約2100文字)