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物価が上がらないならなお良いではないか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 アベノミクスの第1の矢、大胆な金融緩和政策を支持する人は多い。実際に、それによって株が上がり、円が下がり、企業の利益予想が上昇し、生産と雇用が改善しているからである。

 しかし、2015年度末に2%の消費者物価(生鮮食品を除く)上昇率(対前年比)を達成するという目標は実現できないのではないかと考える人が多い。そう考える人の多くは、これまで上がっていなかったのだから、到底できないだろうと考えている。

 これまでそうだったからと言って、これからもそうだとは言えないだが、過去を見て将来を予想するのは当然のことではある。では、実現できないと考える人たちは、どのような過去を見ているのだろうか。彼らはGDPギャップと消費者物価上昇率の関係を見ている。

GDPギャップと消費者物価上昇率の関係

 GDPギャップとは、現実のGDPと現在可能な資本と労働をフルに稼働して実現できる潜在GDPの差である。計算式では、現実のGDPを潜在GDPで割って1を引いたものである。したがって、現実のGDPが潜在GDPを下回っているとき(不況のとき)、GDPギャップはマイナスになり、上回っているとき(好況のとき)はプラスになる。

 は、縦軸に消費者物価上昇率、横軸にGDPギャップを書いたものである。図から明らかなように、GDPギャップがプラスになると物価が上がり、マイナスになると物価が下がる。GDPギャップがマイナスとは、供給する力に比べて需要が足りないのだから、物価が下がるのは当たり前である。

 では、GDPギャップが1%プラスの方向に動くと、

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