2013年09月02日
消費増税に関する有識者ヒアリングは、官邸主導の演出という以上の成果を生まなかったように見える。もともと増税の前提条件をクリアするための一里塚なのだから、それは当然のことと言うべきかも知れない。政府与党はこれを機に消費増税の実施を大前提としてその具体案作りに走り出すだろう。
そこで、多少の手直しはあり得ても、大筋において来春の増税がほぼ予定通り行われるという前提に立って、過去の失敗から何を学ぶべきかを論じてみたい。失敗とはもちろん、1997年の消費増税のことである。
あの失敗は、当時の大蔵省が世界経済の先行きを含めたマクロ経済環境の不確実性に対する備えを欠いていたことにある、と私は思う。当時、私は「増税はやむをえないが、景気の失速が心配なので、せめて特別減税は継続すべきだ」と考えていたが、大蔵省幹部の反応は冷淡だった。「そんな心配をしているひとは、ほかにいませんよ」といった調子で、別の幹部は「足元の景気は過熱気味で、このままではバブルになりかねない。増税してもまったく問題ない」とまで言った。
想定外のアジア危機への備えができなかったことまでは、とやかくいうまい。それはほとんどだれも予測できなかったのだから。問題は、すでに表面化していた金融機関の不良債権問題のゆくえを甘く見積もっていたことにある。また、増税と保険料を合わせた負担増が9兆円にものぼり、その影響がどこまで経済全体に及ぶか、外需も含めた経済環境の動向と合わせて分析する姿勢がなかったことが問題だ。「主犯は金融危機。増税のせいではない」などといって済む問題ではないのである。
へたをすれば、マクロ経済環境の読み誤りと不確実性への手抜かりという失敗は、今回も繰り返されかねない。つまり、
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