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若田部教授が徹底解説 消費税増税を決める前に考えておくべきこと Q&A(中)

若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

 Q:しかし、ギリシャは財政への信認を失って金利が急騰したのではないですか?

 A:日本をギリシャと同列に扱ってしまうところが、そもそも間違いの始まりでした。伊藤裕香子さんという朝日新聞社の記者の方が、『消費税日記』(プレジデント社)という本をお書きになっています。この方は、消費税増税には賛成の意見のようですが、今回の増税がどう決まって行ったかについては、かなり克明に書いています。そのきっかけは当時の菅直人首相が2010年6月25日から26日、カナダ、ハンツヴィルで開催されたG8サミットに参加してからです。ちょうど世界的にギリシャでの財政危機が話題になっており、菅氏は帰国後、しばしばギリシャを引き合いにだして日本の財政危機を語るようになります。メディアもギリシャと日本をたとえる記事を増やします。

 もっとも、このときには日本だけでなく世界の先進国首脳もあわてふためいて、緊縮政策へと舵を切りましたから、世界的な現象ではありました。

 Q:日本とギリシャは違うと?

 A:違います。そもそもギリシャはユーロ圏に属しているため金融政策の自由がありません。政府の保有資産も少ないし、年金支払いは潤沢に過ぎますし、公的部門が大きくて規制が強いというさまざまな問題を抱えています。要するに、構造的な問題を抱えている上に、マクロ経済政策の自由が限られているという状態です。それに対して日本には金融政策の自由があるし、政府の保有資産は巨額です。確かに日本の年金制度は問題を抱えているとはいますが、ギリシャほど公的部門は肥大していません。

 ちなみに、ギリシャが財政再建をするかどうかは、ユーロ圏に入っている国々とってはきわめて重要です。なにしろ、ユーロという単一通貨を維持できるかどうかが問題になるのですから。そういう場合には、外国も他国の国際公約なるものに無関心ではいられないでしょう。

 Q:それでも、増税をしないと日本の国債の金利が急騰するのでは?

 A:よくいわれる話ですが、根拠に乏しいのではないでしょうか。そもそも日本の財政が破綻するというリスクは誇張されすぎていると思います。日本の国債は自国通貨建てですし、 ・・・ログインして読む
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筆者

若田部昌澄

若田部昌澄(わかたべ・まさずみ) 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学史。著書に『経済学者たちの闘い』(東洋経済新報社、2003年:増補版、2013年)、『危機の経済政策』(日本評論社、2009年:第31回石橋湛山賞)。共著に『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社、2004年:第47回日経・経済図書文化賞)。

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