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若田部教授が徹底解説 消費税増税を決める前に考えておくべきこと Q&A(下)

若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

 Q:日本に話を変えたいと思います。日本の場合、89年に消費税の導入、97年に消費税率の3から5%への引き上げを行いました。89年のときには景気の後退は起きていないという意見がありますが。

 A:ちょうどそのときは、バブル経済のさなかで日本経済は絶好調でしたね。そういう景気が過熱しているときに増税するのはありうる、という良い見本ではないでしょうか。

 Q:97年の景気後退は消費増税が主因ではないという意見があります。8月22日、公明党の会議で、内閣府・財務省は「97年の増税直後の景気の落ち込みは増税前の「駆け込み」の反動が大きく、1世帯が生活に使えるお金の減少は月562円で、景気への影響は小さかったと分析」した資料を配布したと言います(鯨岡仁「97年不況、主犯は増税ではない 内閣府・財務省が分析」)。

 A:確かに当時は、アジア通貨危機、日本国内の金融危機が起きましたから、実際のデータにノイズが多すぎて、原因の究明は難しいところがあります。おそらくここでの研究は、すでに昨2012年5月に馬淵澄夫衆議院議員が指摘したものと同種のものかと思われます(馬淵澄夫「税に都合のいいデータのおいしいところはダメ。与党内議論の前提になった内閣府の「97年増税の検証」報告書は問題あり。国会で徹底的に議論を」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32471)。

 ただ、馬淵氏の文章でも指摘されているように、こういう研究には異論があります。八田達夫大阪大学特別招聘教授がかつて行った異論もあります(岩田規久男・八田達夫『日本再生に「痛み」はいらない』東洋経済新報社、2003年、125-133頁)。

 百歩譲って内閣府・財務省の研究に従っても、「主因」ではなくとも、消費税の影響がないとはいっていません。さらに当時と今とでは、次のような相違もあります。

 第一に、89年、97年の増税の時は、減税が同時に行われるか、先行していました。97年の増税実施前には同額程度の減税が行われておりました。今回は、復興増税に始まって、環境税など、増税だけが進行しています。

 第二に、97年のときには資産価格については下落していても、一般物価についてはデフレに突入するかどうかがまだ不明なところで、デフレの怖さについては共有されていませんでした。その97年以降、結果としてデフレ経済が定着してしまいました。今回はそのデフレから脱却できるかどうかの大事なところで、アベノミクスでデフレ脱却を掲げているようにデフレの怖さを十分に認識していなければならないはずです。

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筆者

若田部昌澄

若田部昌澄(わかたべ・まさずみ) 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学史。著書に『経済学者たちの闘い』(東洋経済新報社、2003年:増補版、2013年)、『危機の経済政策』(日本評論社、2009年:第31回石橋湛山賞)。共著に『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社、2004年:第47回日経・経済図書文化賞)。

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