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次期FRB議長指名を辞退したラリー・サマーズ氏の評判

吉松崇 経済金融アナリスト

 9月15日、オバマ大統領の経済政策ブレインで、次期FRB(連邦準備制度理事会)議長の最有力候補と見られていたラリー・サマーズ氏が、この指名選考への辞退を申し出て、ホワイトハウスもこれを認めた。サマーズ氏に対しては、民主党リベラル派のみならず、中道派からも強い反発が出て、議会での指名承認の見通しが立たなくなったようである。一体なにが起きたのだろうか?

 そもそも、バーナンキFRB議長が、来年1月の二期目の任期満了をもって退任する意向を示唆して以来、次期FRB議長の最有力候補はジャネット・イエレン副議長であるというのが、大方のエコノミストや金融市場関係者のコンセンサスであった。

 イエレン氏のマクロ・エコノミストとしての評価は申し分なく、また、サンフランシスコ連銀総裁を経てFRBの副議長に就任した経歴に加え、他のFRBの理事と比べてもその経済見通しの確かなことで、金融市場参加者の信頼も厚い。金融政策の考え方はバーナンキ議長に近いので、彼女の議長就任で金融市場が大きく動揺するとは考え難い。という訳で、誰が考えても、これは妥当な人事に思えた。

 ところが、7月半ばあたりから、イエレン氏の有力な対抗馬として、サマーズ氏の名前が取り沙汰されるようになった。オバマ大統領とホワイトハウスが、サマーズ氏という観測気球をうちあげたのだ。そしてこれを契機に、イエレン氏とサマーズ氏の其々の応援団が、欧米の主要メディアで、「どちらが適任か?」を巡って論争を繰り広げるという、これまでのFRB議長人事では見かけなかった異例の展開となっていた。

サマーズ氏とはどんな人物か?

 ラリー・サマーズ氏は、2009年のオバマ政権の発足時からその経済政策の司令塔である経済諮問会議委員長を務めた大統領の側近の一人であり、大統領はサマーズ氏を極めて高く評価している、と言われる。サマーズ氏の応援団は、「(サマーズ氏は)どんなに複雑で難しい問題でも、15分話を聞くだけで完全に理解し、30分以内に幾つかの処方箋とそのメリット・デメリットを整理して呈示する能力がある」(嘗て、クリントン政権時代の財務省で部下であったブラッド・デロング・カリフォルニア大学教授)という。要するに、極めて頭の回転の速い、問題整理能力抜群の人なのだろう。ホワイトハウスであれ、どんな組織であれ、こういう人は重宝される。(“Fed Contenders: A Reading List” by Binyamin Appelbaum, New York Times, August 1, 2013)

 ただし、サマーズ氏は毀誉褒貶の激しい人物でもある。2006年、ハーバード大学の学長であった時代に、女性蔑視ともとれる発言で物議を醸し、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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