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FRB、量的緩和縮小見送りというギリギリの選択―迫る「正常化」への試練

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)で、「量的金融緩和」を現状のまま続けることを決めた。この縮小見送りはギリギリの決定だった。

 縮小を見送るか、段階的に先ずは100億ドル程度の量的緩和の縮小に踏み切るかとの間には大差がない、とはジェイムズ・ブラード・セントルイス地区連銀総裁の言である。

 見送りの理由として、雇用などの一部の経済データが、米国経済の軟調を示すものとし、 堅調を示唆するデータが出て来れば、10月の政策決定会合でも量的緩和の削減にも踏み切ろうとまで付け加えた。

 要するに、慌てることはない、FRBは政策変更までには、待つ余裕があると言うことだろう。

 しかし、FRBの次期議長の人選、議会承認を前にして、量的緩和の縮小が、金融資本市場に対して、如何なる影響を発揮するかに対して、自信がないので、見送ったと言うのが、本当のところではないだろうか。

QE3は、失敗だったのか?

 FRBは、昨年9月12日、13日の政策決定会合で、米国国債、不動産担保証券などの長期証券の月次買い上げ額を、850億ドルにする方針を決定し、公表した。

 その結果、昨年9月12日から今年の今月18日までに、米国連銀の米国国債保有残高は4012億ドル、不動産担保証券の保有残高は4960億ドル、合わせて8972億ドルも増加した。

 上記の証券買い上げ増を反映し、米国連銀のマネタリーベースは、同期間に8804億ドル増加した。

 しかし、量的緩和策による大量の流動性供給にも関わらず、米国の長期金利の水準は、最近1年余りで大幅に上昇してしまった。

 米国の長期金利の水準を、10年物米国国債の流通利回りの推移で見ると、昨年7月25日の1.43%(底値)、量的緩和第3弾(QE3)を決定した昨年9月13日の1.75%から、今年の今月5日には2.98%へと上昇してきた。

 量的緩和政策は、長期金利の引き下げを通じて、米国経済の景気拡大を刺激しようとのものであったはずであるから、その意味では、QE3は失敗であったと言えよう。

 米国の長期金利の上昇は、

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