メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

 重大なコメ偽装事件が発覚した。三重県のコメ卸会社の三瀧商事は、中国産米などの外国産米や玄米茶用などの加工用米を「愛知県産あいちのかおり」などとして、国産の主食用として販売していた。

 このコメはイオンの弁当などとして流通した。10年10月から今年9月まで最大で4,386トン、うち791トンが外国産米だったと言われている。国民一人当たりのコメの年間消費量は60キログラム程度なので、この数字は7万3千人が年間食べる量と同じである。

 これによって三瀧商事が得た不正な利益は、外国産米で5千5百万円、加工用米で6千9百万円、少なくとも合計1億2千万円に上るとされている。外国産米に報道の焦点が当てられているようだが、加工用米の転売の方が比重が高い。

 似たような事件を記憶していないだろうか?2008年に起きた汚染米事件である。海外から輸入した米にカビが生じた。農林水産省は、このコメを糊用に処分しようとした。安くこのコメを政府から買い入れた業者が、主食用などに高く転売して、利益を得た。汚染米8,368トンのほとんどが横流しされた。

 この事件が発覚した後、農林水産省の事務次官は、「責任は一義的には食用に回した企業にある。私どもに責任があると考えているわけではない」と述べ、世間の非難を浴びた。根源的な責任は、横流しすると利益が出る仕組みを作っている農林水産省にあるからだ。

 工業用の糊に売却するとトンあたり1万円程度だが、焼酎、あられ、せんべいなどの加工用途だと15万円、食用なら25万円で売却できる。横流しすると濡れ手で粟の儲けになる。清廉潔白な農林水産省の事務次官ならともかく、業者に横流しするなと言う方が無理だ。同事務次官は非難の大きさにあわてて陳謝し、発言を撤回したが、事件発覚後わずか2週間で更迭された。

 これらの事件の本質にあるものは、減反政策により主食用の価格を意図的に高く維持しているために、同じ品質の米に用途別に多くの価格がつけられているという「一物多価」の状況が発生していることである。

 他の国では、 ・・・ログインして読む
(残り:約1057文字/本文:約1923文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

山下一仁の記事

もっと見る