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二極化JR、救済者なき北海道の試練

 国鉄分割民営化から四半世紀がたった。短いようで長い年月である。この間、JRは成長企業群と、置き去りにされた企業郡に完全分離してしまった。もはや「JRグループ」という言葉は乗り入れ路線という意味以上のものは失せた。落ちこぼれ組のJR北海道を他のJRが救済する可能性はいまや皆無である。

脱線した列車を調べる運輸安全委員会の調査官ら=20日、北海道七飯町 脱線した列車を調べる運輸安全委員会の調査官ら=2013年9月20日、北海道七飯町

 いまのJRには民営化の陰と陽の世界が鮮明になっている。潜在力が花開き成長企業となったJR東日本、JR東海に代表される本州3社が「陽」の世界だとすれば、JR北海道やJR四国など「3島会社」は、国鉄時代の負の遺産を背負ったまま置き去りにされた民営化の「陰」の部分だ。

 陽の筆頭はJRで最大の規模を誇るJR東日本である。首都圏の鉄道ネットワークという大きな含み資産を武器に、拠点駅構内でエキナカなどの流通サービス事業に次々と乗り出している。これは、かつて阪急電鉄や東急電鉄などの有力私鉄が鉄道事業に流通サービス、不動産などの事業を融合させ、付加価値を何倍にも高めた戦略、いわゆる「小林モデル」を彷彿とさせるものだ。JR東日本という巨像が本気で取り組めば、その潜在力は私鉄の比ではないだろう。

 JR東海は鉄道そのもので巨大事業に挑んでいる。悲願のリニア中央新幹線の建設である。最高時速500kmの世界最先端技術で建設する未来型の新幹線だ。まずは東京~名古屋間の開業を優先するが、将来は東京~大阪間を1時間強で結ぶ計画だ。

 総額9兆円にも及ぶ建設費用は国家予算に頼らず、自前で調達するのがミソだ。公共事業でやるとなると、どこに駅を造れといった政治の介入がきつくなる。それにもし公共事業でやるとすれば、北海道や東北、九州の整備新幹線計画を抱える政府まかせでは、いつになったら中央リニアに予算が回ってくるか分からない。

 そうしたリスクより、スピード重視で自前のプロジェクトにすることを選んだのだ。それにしても9兆円もの事業を自前で進める民間企業がほかにあるだろうか。この四半世紀、東海道新幹線の高成長を演出してきたJR東海の強い自信の表れだろう。

 これらと対照的に、北海道の事故や補修放置問題は、いまもJRに国鉄時代の影が残っていることを感じさせる。赤字体質が改善せず、ローカル線の将来像が描けない。国鉄時代と変わらない課題が重くのしかかっているのだ。おまけに日々の安全運行にも大きな疑問符がついた。

 原因は

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